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  • 言葉によって綴られた幻想の架空都市──『方形の円 偽説・都市生成論』 - 基本読書

    方形の円 (偽説・都市生成論) (海外文学セレクション) 作者: ギョルゲ・ササルマン,住谷春也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る言葉によって綴られた幻想の架空都市──とお題が出されれば、幻想文学ファンは息もつかせず「(カルヴィーノの)見えない都市ー!」と轟をあげると思うがここに邦訳として新鋭が誕生した。ルーマニアの作家、ギョルゲ・ササルマンによる『方形の円 偽説・都市生成論』である。計36個の架空都市が一つ数ページの中におさめられており、ページをめくるたびに想像だにしなかった都市の姿が立ち現れてくる。 一つ一つの都市の記述が短いのでおお! おお! と驚きつつページをめくっていくうちにあっという間に読み終わってしまう(紙のの長さが213ページなのもあり)。ただ、その内実はストーリーの展開というよりかは都市のスケッチに近

    言葉によって綴られた幻想の架空都市──『方形の円 偽説・都市生成論』 - 基本読書
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    oono_n 2019/07/02
    私からもお薦めします。
  • 10人の人間とライオンと馬に取り憑かれた魔術師──『魔術師ペンリック』 - 基本読書

    魔術師ペンリック (創元推理文庫) 作者: ロイス・マクマスター・ビジョルド,鍛治靖子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るロイス・マクスター・ビジョルドの代表作の一つ、五つの宗教や魔術が存在する世界を描く〈五神教〉シリーズの最新作がこの『魔術師ペンリック』である。とはいえ世界観を同じくしているだけで、ペンリック・シリーズ自体はこれが最初の巻、最初の翻訳なので、ここから読み始めて何も問題なし(というか、僕も読んでないがおもしろかった)。前シリーズ読者向けの情報を入れておくと、『影の王国』より150年ほど未来、『チャリオンの影』『影の棲む城』より100年ほど過去に相当するらしい。 ガッツリ世界観が作り込まれたファンタジィ作品なので、そういうのが好きな人達はぐっとくるだろう。僕もそういうのが好きなタイプである。書には連作中編のよ

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    oono_n 2018/10/01
  • デビュー作にして超ド級の傑作ハードSF──『ランドスケープと夏の定理』 - 基本読書

    ランドスケープと夏の定理 (創元日SF叢書) 作者: 高島雄哉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/08/30メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る書『ランドスケープと夏の定理』は第5回創元SF短編賞を受賞した高島雄哉の、受賞作を端緒とする3編の連作短編集にして、単行のデビュー作になる。その作風を一言でいえばキャラ萌えが追加されたグレッグ・イーガン(いや、イーガン作品のキャラに萌えないってわけじゃないですよ!)、日作家でいうならば小松左京みたいなもんで、ちゃくちゃおもしろい。ぜんぜんデビュー作って感じじゃない。 21世紀後半を舞台に、22歳で教授になった天才物理学者の姉と、姉には及ばないものの優秀な弟が、世界を激変させる知性に関する3つの新しい定理を解き明かしていく──と、ざっくり表現すればそんな話になる。第一作「ランドスケープと夏の定理」では、”すべての

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    oono_n 2018/09/03
  • 少女が蒸気駆動の甲冑機械を着て駆け回る──『スチーム・ガール』 - 基本読書

    スチーム・ガール (創元SF文庫) 作者: エリザベス・ベア,安倍吉俊,赤尾秀子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/10/21メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る「スチーム」ときて「ガール」である。スチームだけでも満貫だが、そこにガールがつけば役満である。ということで『スチーム・ガール』なわけだが、読み始めて気づいたのだが原題は『KAREN MEMORY』で、その書名通りにカレンという名の高級娼館で働く少女が、一連の事件が終わった後に回想形式で語る物語である。 ちなみにスチーム要素もちゃんとある。飛行船から船まで、蒸気駆動の船が世界を闊歩している19世紀後半のアメリカ西海岸の港町が舞台なのだ。ただ、少女が蒸気駆動の甲冑機械を着て駆け回るとか記事のタイトルにつけてしまったし、帯にも「愛する彼女を守るため、カレンは蒸気駆動の甲冑機械を身にまとう」と書いてあるが、

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    oono_n 2017/10/24
    略せば「スチガ」!!!!!!
  • 新しい現実を解読するための、新しい『1984』──『2084 世界の終わり』 - 基本読書

    2084 世界の終わり 作者: ブアレムサンサル,Boualem Sansal,中村佳子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/08/28メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る書はアルジェリアの作家ブアレム・サンサルによる7番目の長篇にして、日では初めての邦訳書になる。また、その書名からもわかるとおりに、明確に『1984』を意識して書かれたディストピア小説でもある。『現実はもう、オーウェルの『1984』の説明では補いきれなくなっていました。』と語る著者が、新しい『1984』を描くために導入した世界観は「宗教が支配する全体国家」というもの。 現実はもう、オーウェルの『1984』の説明では補いきれなくなっていました。わたしたちが見ている全体主義的な幻想世界には、アラー、預言者、そして絶対に過ちなど犯さない聖人や代理人たちとちった新しい登場人物が、いつのまにか入

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    oono_n 2017/09/15
  • フィクションとしてのSF、幻想文学史──『ソヴィエト・ファンタスチカの歴史』 - 基本読書

    ソヴィエト・ファンタスチカの歴史 作者: ルスタム・スヴャトスラーヴォヴィチカーツ,ロマンアルビトマン,Roman Arbitman,梅村博昭出版社/メーカー: 共和国発売日: 2017/06/09メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見るかなり狂ったである。 端的にいえば書名にもあるように、ソヴィエトのファンタスチカ(SF、幻想文学全般をさす)の歴史について語られているのだが、実はその内容に多くのフィクションが紛れ込んでいる。実在しない作家、実在しない書名──だけならただの"架空の歴史語り"だが、実在する人物のまったく異なる経歴であったり、言っていないことを言ったかのように書いていくスタイルで全方位に向かって喧嘩を売っている。 しかも、書の、メイン部分(編者あとがきを除く)を読んだだけでは書が「フィクションだ」とネタバラシをしていないので、実際に書が刊行された後、そ

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    oono_n 2017/07/24
    これ、遍歴者賞のノンフィクション部門を受賞したので、真面目な研究書だと信じて原書を持っている私って。。。(^^;;; この冗談はキツい。
  • シンギュラリティ神話への警鐘──『そろそろ、人工知能の真実を話そう』 - 基本読書

    そろそろ、人工知能の真実を話そう 作者: ジャン=ガブリエルガナシア,伊藤直子,小林重裕出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/05/26メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る技術的特異点(シンギュラリティ)という概念がある。簡単に言ってしまえば人工知能などの知性が人間を超えた時、そいつらが人間を超えた速度でまた技術を加速させ、それがまた変化を加速させるので、あるポイントを超えたらあっという間にわけがわからないぐらい科学は進化し我々の目の前に広がる状況は一変するという話である。 たとえば人間は意識をアップロードして事実上の不死を獲得して環境の改変、宇宙への旅立ち、身体の改造などなんでもござれの状況になるとされている。で、日人の多くは「そんなことあったらいいっすねハハハ」ぐらいの冗談半分の物なんじゃないのかなと時折ニュースを読む限りでは思うが、これについて結構

    シンギュラリティ神話への警鐘──『そろそろ、人工知能の真実を話そう』 - 基本読書
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    oono_n 2017/05/29
    “僕は正直、これを読んで「今さらこんなことを真面目に言わないといけないなんて大変だなあ」と思ってしまった”
  • 地球、消滅──『23000: 氷三部作3』 - 基本読書

    23000: 氷三部作3 (氷三部作 3) 作者: ウラジーミルソローキン,Vladimir Sorokin,松下隆志出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/07/27メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る現代ロシアのポストモダン文学を代表するウラジミール・ソローキンによる氷三部作が『氷』『ブロの道』に続く書『23000』で無事に完結した。宇宙創世から世界をまるごと創造し、世界の終わりまでを描き切ろうとした、壮大な野心を持った三部作だ。SFといえばSFだし、陰謀/宗教/テロ小説・現代小説とジャンル混合型の海外作品として、個人的にはこの数年でもっとも楽しませてもらった作品である。 世界観とかあらすじとか 三部作を通して描かれるのは革命期から現代に至る20世紀のソ連・ロシアを中心とした世界中。時代や状況はおおむね現代と同じように推移しているが、しかしこの世界には

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    oono_n 2016/07/29
  • 本を読んで己を強化し敵をぶち殺せ!!──『図書館大戦争』 - 基本読書

    図書館戦争 作者: ミハイルエリザーロフ,北川和美出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/11/26メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見る1988年に人権を侵害する表現を規制するための「メディア良化法」が制定され、不適切と認定された創作物は良化特務機関によって取り締まりを受けるがその弾圧に図書館が声をあげる──、『図書館戦争』はそんな話ではない。 『図書館戦争』はある作家が書いたを、幾つかの条件を満たして読み終えると、凄く力が沸き起こってきたり記憶力がよくなったり権威がましたりする現象を用いて・奪い合う為に行われる戦争の話である。で殴りかかるわけではなく、ようは自己強化型マジック・アイテムを使ってロシアで行われる超能力者・抗争の話なのだ。 そのを書いた人間の名はドミトリー・アレクウサンドロヴィチという。まったく無名のままその生涯を終えた。合計五十万

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    oono_n 2015/12/14
  • 加速的に進歩を遂げた仮想世界──『セルフ・クラフト・ワールド』 - 基本読書

    セルフ・クラフト・ワールド 1 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 芝村裕吏出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/11/20メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る今更仮想世界ゲーム物、それも異世界ファンタジーですかー? と普通だったら思うところだが著者が芝村裕吏ともなれば話は別だ。『高機動幻想ガンパレード・マーチ』他いくつものゲーム、それもAIを中心とした高度な技術を組み込んだゲームに関わってきたゲームデザイナーであり、(どこまで芝村氏が関わっているのかはわからないが)未来世界を舞台にし、AIが遥かな進化を遂げた仮想世界を描くとなればその分野のプロがガチで殴りこみにきた的な面白さが企画段階で既にある。 もちろんあまりにも現実的な縛りを作中に入れすぎた結果話がまったくつまらなくなってしまえば末転倒であるし、作も現実的に設定を組み上げられているためにたとえばソードアート

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    oono_n 2015/11/24
    どこの何がシンギュラリティなのか、ちょっとよくわからなかった。
  • 魔術×ミステリ──『魔術師を探せ! 』 by ランドル・ギャレット - 基本読書

    魔術師を探せ! 〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: ランドルギャレット,旭ハジメ,公手成幸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/09/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る書『魔術師を探せ!』はランドル・ギャレットによる魔術が当たり前に存在する世界での殺人事件を探偵役が解決していくファンジックミステリだ。翻訳は1978年が初出なので実に40年近くの時を経て新訳で復活した。長篇ではなく、「その眼は見た」「シェルブールの呪い」「青い死体」の3篇を集めた中篇集となる。 それにしても、魔術が存在する世界でのミステリって、自由度が高くていろいろ実験的なこともできそうだし、もっとたくさん数があってもいいと思うんだけれどもあんまり数がないのはやっぱりその理論的な構築が難しいからだろうか。 たとえば、問答無用で遠く離れた相手の首を魔術でひねり潰せるのであれば殺人

    魔術×ミステリ──『魔術師を探せ! 』 by ランドル・ギャレット - 基本読書
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    oono_n 2015/10/08
    冬木さんによる「魔術師を探せ!」の書評。
  • スチームパンク×時間SF──『ねじまき男と機械の心』 by マーク・ホダー - 基本読書

    ねじまき男と機械の心〈上〉 (大英帝国蒸気奇譚2) (創元海外SF叢書) 作者: マーク・ホダー,緒賀岳志,金子司出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/07/29メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見るねじまき男と機械の心〈下〉 (大英帝国蒸気奇譚2) (創元海外SF叢書) 作者: マーク・ホダー,緒賀岳志,北原尚彦,金子司出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/07/29メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見る優生学者が途方もない大きさまで育てた乗り物用のヤスデ、伝令用の犬、言葉を覚えて伝えるインコと異形の群れが跳梁跋扈する、我々のよく知る歴史とは決定的に分岐してしまっている19世紀のロンドンが舞台となる<<大英帝国蒸気奇譚>>シリーズの第二弾が書『ねじまき男と機械の心』になる。一作目は同じく上下巻で『バネ足ジャックと時空の罠』があ

    スチームパンク×時間SF──『ねじまき男と機械の心』 by マーク・ホダー - 基本読書
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    oono_n 2015/08/06
    このシリーズは大好き!
  • 泰平ヨンの未来学会議〔改訳版〕 by スタニスワフ・レム - 基本読書

    ほとんど改行なく文章が敷き詰められ、状況は常に動き続け人間はカタストロフの渦へと突き落とされていく。 書『泰平ヨンの未来学会議』は泰平ヨンを主人公としたシリーズの三作目にしてはじめての長編(場合によっては中編)にあたるが、ここから読んでも何の問題もない。ちなみになぜ突然改訳版が出たのかといえばご盛況なハヤカワ文庫補完計画の一環として──ではなく、書を原作とした『コングレス未来学会議』という映画が近々公開するからそれにあわせての刊行になる。一人称の我輩が私になるなど、改訳とはいってもちょっと読み比べただけでも随分たくさん手が加えられており決定版にふさわしい出来。 最近はスタニスワフ・レム・コレクションシリーズで八年ぶりの新刊がでた『短編ベスト10』が出たり、原語であるポーランド語からの翻訳である『ソラリス』が文庫落ちするなどなぜかレムづいている。 泰平ヨンの未来学会議〔改訳版〕 (ハヤカ

    泰平ヨンの未来学会議〔改訳版〕 by スタニスワフ・レム - 基本読書
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    oono_n 2015/06/09
    冬木糸一さんによるBlog記事。
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