◇『なぜ科学を語ってすれ違うのか--ソーカル事件を超えて』 (みすず書房・3990円) ◇熾烈な「サイエンス・ウォーズ」の行方は ソーカル事件とは、サイエンス・ウォーズを激しく燃え上がらせた、アメリカの物理学者アラン・ソーカルによる悪名高い悪戯(いたずら)のことである。えーと、サイエンス・ウォーズって、何? サイエンス・ウォーズは、一九九〇年代後半から二〇〇〇年代初め、アメリカやフランスを主戦場に戦われた、科学者と、科学論、特にポストモダン論者との熾烈(しれつ)な論争だ。日本では、一部雑誌などを除いてあまり取り上げられなかった。だがこれは現代の社会と科学・科学者の在り方に課題を投げ、大きな影響と教訓を残したのである。本書は、トロント大学の哲学教授である著者が、論争が一段落した二〇〇一年にアメリカで出版したもの。サイエンス・ウォーズとソーカル事件に留(とど)まらず、科学論の課題を歴史的に見直