数学の生物学への応用、かなりの歯応え。 テーマというか問題意識はこうだ―――「20世紀における数学の推進力が物理学だとしたら、21世紀のそれは生物学となるだろう」 最初は入りやすい。コッホの顕微鏡やメンデルの遺伝から始まり、ダーウィン、DNAをさらりとおさらいした後、倍率を拡大し、時計を早送りする。分子レベルのDNAの振る舞いや、ヒトゲノム計画、ウイルスの構造、細胞の構成、ウイルスの形や行動、および生態系の相互作用まで深堀りする。 本書の構造は、生物学の歴史をトレースするようだ。はじめ、生物学は植物や動物に関する学問だった。次に細胞に関する学問となり、現在では、複雑な分子に関する学問となっている。生命の謎に関する科学的思考の変化に合わせ、本書は日常の人間のレベルからはじめ、生物の微細な構造にどんどん細かく焦点を合わせていき、最終的に「生命の分子」であるDNAにたどりつく。 ユニークなことに
ルイス・パイエンソン「科学と帝国主義」佐々木力訳『思想』No. 779, 1989年5月、9–28ページ。 http://ci.nii.ac.jp/naid/40001546539 科学と帝国主義という主題は、日本の雑誌でも特集が組まれるくらい多大な関心をひいてきました。この視角についての基本文献であるパイエンソンの論文を読みました。精密科学の諸理論が非西洋圏で熱心に学び吸収されるのは、それを会得していることが文明化のあかしとみなされていたからです。この意味で精密科学の伝播は文化帝国主義の一側面を構成します。植民地では科学研究の施設が建設され、そこに本国から科学者が送り込まれます。植民地において科学がどう利用されたかをみるためには、この(科学という)本国文化を喧伝するために送り込まれた科学者たちの活動に焦点を当てる必要があります。たとえばフランス領西アフリカにフランスから送り込まれたエドュ
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