作品の原点 鴎外文庫は森鴎外の旧蔵書からなるコレクションである。鴎外が折にふれて読んだり、執筆の参考にしたりした書籍であるから、鴎外自身の作品や著書はほとんど無く、直筆原稿や日記・書簡なども含まれていない。特徴としてよく言われるのは、歴史・芸術・文学等の人文科学から軍事・医学といった自然科学までの広範な分野を含み、古典籍から当時の新刊書に至るまで洋の東西を問わず収集された、その資料の多種多様さである。また、鴎外自身による書入れがあるものや執筆の過程で収集した参考資料やノート類を装丁したものが多く残されているのも大きな特色である。 本コーナーでは、このような鴎外文庫の特徴をふまえ、鴎外作品からいくつかを取り上げ、その作品に直結する資料、いわば「作品の原点」といえるものを紹介する。最初に取り上げるのは、史伝三部作といわれる『渋江抽斎』(1916)、『伊沢蘭軒』(1916-1917)、『北条霞
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