コスト無視の国防 防衛を政府が独占する弊害の一つは、コスト観念の欠如である。民間企業や個人であれば、いくら安全が大切でも、過大な金額を警備に注ぎ込まない。他の幸福が犠牲になるからだ。しかし、政府はしばしば国民に過大な負担を押しつける。 本書が述べるように、漢帝国は武帝の時代、戦争を繰り返した。最大の目的は侵入する匈奴への対抗で、やむをえない面はある。問題はコストだ。先代までに蓄えた豊富な国家財政を使い果たすが、歯止めはかからず、新しい財源を求める(p.201)。 財源確保のため実施したのは、増税、塩鉄専売、商品運搬の官営化など。農業を本、商工業を末とする思想に基づき、商工業者を増税の標的とした。脱税の告発に報奨金を与えて奨励した結果、中産者以上の商人はほとんど破産したという(p.251)。 塩鉄専売も、製鉄業や製塩業を営んでいた地方の豪族や大商人に打撃となる。増税や専売の実施後、社会不安が