実質賃金、3カ月ぶり減少 物価高騰に追い付かず 2024/10/8 8:30 (2024/10/8 8:31 更新) [有料会員限定記事]
「息子さんと思われる方が亡くなったようだ。確認してもらいたい。最短でいつ来られますか」 在ウクライナ日本大使館からだった。 ▶ウクライナ侵攻に関する記事一覧 *フォロー機能が使えます 遺体左腕に渡航前彫ったタトゥー すぐに国際便を手配し、11月15日に隣国ポーランドの首都ワルシャワに到着。爆撃が続くウクライナには入国できず、大使館の連絡をホテルで待った。「間違いであってほしい」。祈るしかなかった。 2日後。大使館とのビデオ通話で、遺体の映像を見せられた。ウクライナ東部ルガンスク州の前線でミサイルが近くに着弾し、破片が左側頭部を直撃。首都キーウ(キエフ)に運ばれてきたと聞いた。体には血の跡が残っていた。左腕に「SAMURAI」のタトゥー。渡航直前に「彫った」と見せられた記憶があった。「確かに息子だ」。全身の力が抜けるのを感じた。 「入隊試験に落ちたらすぐ帰る」 「銃は持たない。英語のスキルが
太平洋戦争の末期、戦争指導者に面と向かって作戦の無謀や前線の士気低下など深刻な問題を直訴した硬骨漢がいた。兵隊作家として国民的人気を博した火野葦平(1907~60)である。 ◇ ◇ 「インパール作戦従軍記-葦平『従軍手帖』全文翻刻」(集英社)によると、44年8月28日、ビルマ(現ミャンマー)で火野は郷土部隊・菊兵団の田中新一師団長から杉山元(はじめ)陸相宛てなど2通の手紙を託された。田中は火野に対し「大本営に行ったら、すぐその足で大臣に会って、よくこちらのことを話してくれ」と依頼したという。 約1カ月後の9月25日、火野は大本営に到着し面会は実現した。しかし、「従軍手帖」は面談の内容には触れていない。火野が具体的なやりとりを明かしたのは「火野葦平選集」第四巻(59年、東京創元社)の巻末で自ら書いた「解説」である。 それによれば、ビルマから帰国する機上で意見書を仕上げた。「インパール作戦
特攻隊員には日本統治下の朝鮮半島出身者もいた。その足跡を追った韓国紙記者の著書「私は朝鮮人カミカゼだ」によると、朝鮮人隊員の戦死者は17人。韓国にとっては、加害者側になって若い命を散らせた痛恨の記憶だと言える。 17人は「日本の植民地支配の犠牲者」だが、それにとどまらない。家族を養うためとはいえ、多くが志願入隊だったため、「日本の侵略戦争に加担した親日売国奴」と批判される。 それを象徴する「事件」が2008年に起きた。韓国通で知られる女優の黒田福美さんが、ある朝鮮人特攻隊員の慰霊碑建立を計画。遺族の理解や地元自治体の協力を得て完成させたが、除幕式直前に抗議運動が起き、撤去した。 もっとも、生き残った元隊員は、戦闘機の操縦技術を持つ人材として国の発展に寄与。韓国空軍に転じ「朝鮮戦争の英雄」「韓国航空産業の父」になった。 隊員の遺書などを世界記憶遺産にする構想に、韓国政府は特にコメントしていな
行政はPCR検査を拡充して感染者を早期発見し、ウイルスの封じ込めを-。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバーで、日本感染症学会の舘田一博理事長(60)=長崎大医学部卒=が西日本新聞の取材に応じ、「第3波」の瀬戸際にある九州での抑止戦略を提言した。医療機関も定期的に検査を実施し、院内感染、クラスター(感染者集団)の発生を防ぐ。住民は、感染リスクが高まる「五つの場面」を徹底して避ける。呼び掛けは具体的だ。 舘田氏は、国内の感染症対策の第一人者。分科会の前身である専門家会議の発足当初から、政府の新型コロナ対策に関与してきた。 九州は現時点では、関東、関西、北海道のような感染急拡大の局面にこそ至っていないものの、福岡県や大分県で新規感染者のカーブが上向き始めており「決して油断できない状況だ」と舘田氏。 日々の感染者の数は2週間程前の実態を表しているとされ、現状はさらに感染が進行している恐
政府の新型コロナウイルス対策で約8000万枚の大量在庫が問題になった布製「アベノマスク」について、配布希望の殺到により、配送料が10億円に上るとの試算があることが1日、政府関係者への取材で分かった。配布せずに全て廃棄した場合は6000万円程度の費用で済んだとみられる。 政府関係者は「日本人的な感覚では『廃棄の方が安いから捨てよう』とはならない。ちゃんと使ってもらえれば経済効果もある」と主張。一方で、厚生労働省の担当課は「精査中で具体的な配送料の全体額はまだ分からない」としている。 厚労省によると、配布希望は1月28日までに約37万件あり、応募枚数は推計2億8000万枚分以上。全希望者に行き届くよう枚数を調整するという。国の委託を受けた民間業者が3月から順次配送する。 (井崎圭)
ハンセン病やエイズ(後天性免疫不全症候群)など、感染症は過去にも目に見えないウイルスへの恐怖から、偏見や差別が繰り返されてきた歴史がある。ハンセン病元患者を支援する一般社団法人「ヒューマンライツふくおか」(福岡市)の古長(こちょう)美知子代表理事(65)は「国や自治体が発表する新型コロナウイルス感染者数が独り歩きし、数を減らさなければという風潮だ。ハンセン病問題との類似性を感じる」と指摘する。 祖父がハンセン病を患い、ハンセン病家族訴訟原告団の林力団長を父に持つ古長さん。「国や自治体がしきりに使う『感染者数をゼロに』という言葉が、ハンセン病患者を療養所に隔離し、地域での感染者をゼロにした『無らい県運動』を想起する。差別をする人も感染者を減らそうという正義感から、患者や家族を攻撃してしまう」と語る。 その上で、「予防は大切だが、徹底していても感染することはある。国や自治体が感染拡大防止に力を
新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、職場で接種に関する調査を受けた北九州市職員から「目的を知らされず、接種したかどうか周囲に分かる聞き方だった」との情報が、西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。投稿者はアレルギー体質で副反応を心配して接種していないというが、市民に接種を呼び掛けていることもあり、市役所内には「接種して当然」という風潮があるという。専門家は「自治体職員であっても、接種を望まない個人の権利は守られるべきだ」と指摘する。...
第2次世界大戦末期に福岡市の九州帝国大(現九州大)医学部で起きた米国人捕虜に対する「生体解剖事件」を題材にしたドラマが13日夜、NHK総合で放送される。原案は、戦犯として死刑判決(後に減刑)を受けた元助教授のめいが刊行したノンフィクション小説。NHK職員のその息子が福岡の事件関係者に会うなどして、6年がかりで企画を実現させた。「しかたなかったと言うてはいかんのです」。手術に関わったことを生涯悔やみ続けた元助教授の言葉を、そのままタイトルとした。 事件当時助教授だった鳥巣太郎さんは詳しい事情を知らず、教授から「手伝い」を頼まれて手術に参加した。ただ教授は逮捕直後に自殺し、鳥巣さんが首謀者として扱われたという。 手術が行われた解剖実習室には医師や軍人ら十数人が集まり、肩に銃創がある米兵が歩いて入室し、麻酔で眠らされた。教授のメスで胸部が切開、肋骨(ろっこつ)が切断され、片肺が切り取られた。米兵
29日、岸田文雄新総裁を選出した自民党は、急進的な変化でなく安定感を、いわば「守り」を優先した。事前の調整通り、1回目の投票で3位だった高市早苗前総務相の陣営が、決選投票でこぞって岸田氏に乗る戦術「岸田・高市連合」が実現。その改革志向で世論の人気を博していた河野太郎行政改革担当相を包囲し、封じ込めた。党内派閥、実力者の駆け引きを基とした「内輪の論理」による決着は、迫る衆院選にどんな副作用をもたらすのか。
水俣病を世界に伝えた米国人写真家ユージン・スミス氏(1918~78)を描いた映画「MINAMATA-ミナマタ-」が23日に公開されるのを前に、製作、主演を務めた俳優ジョニー・デップさん(58)がオンラインで記者会見した。当初から「特別な作品を作っていると自覚していた」というデップさんは、主演作に込めた思いを語った。 映画は、70年代初頭、熊本県水俣市の水俣病多発地区で患者らと交わり、後に写真集「水俣 MINAMATA」を著したスミス氏の視点から水俣病に迫った創作話。スミス氏役をデップさんが演じ、真田広之さんや国村隼さんら日本の名優たちが脇を固めた。 2日夜、フランスからリモートで会見したデップさんは冒頭、「プロデューサーとして参加することに全く迷いはなかった。脚本と企画を受け取ってすぐに理解した。日の目を見るべき作品だと」。日本の俳優陣についても「作品に深みと重みを与えてくれた」と絶賛した
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