目次へ 縦書き 永訣の朝 けふのうちに とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ (あめゆじゅとてちてけんじゃ) うすあかくいっさう陰惨〔いんさん〕な雲から みぞれはびちょびちょふってくる (あめゆじゅとてちてけんじゃ) 青い蓴菜〔じゅんさい〕のもやうのついた これらふたつのかけた陶椀〔たうわん〕に おまへがたべるあめゆきをとらうとして わたくしはまがったてっぽうだまのやうに このくらいみぞれのなかに飛びだした (あめゆじゅとてちてけんじゃ) 蒼鉛〔さうえん〕いろの暗い雲から みぞれはびちょびちょ沈んでくる ああとし子 死ぬといふいまごろになって わたくしをいっしゃうあかるくするために こんなさっぱりした雪のひとわんを おまへはわたくしにたのんだのだ ありがたうわたくしのけなげないもうとよ わたくしもまっすぐにすすんでいくから (あめゆじゅとてちて