阪神大震災の直前、神戸市東灘区の自宅敷地に「胸騒ぎ」を感じて井戸を掘った男性がいる。1944年と46年に相次いだ南海トラフ地震を疎開先の和歌山県で体験した大島太郎さん(92)。家の補強や食糧備蓄も怠らず、井戸は当時、断水に見舞われた地域の人を助けた。毎年、地元自治会で講演し、将来の南海トラフ地震について「今できるのは備えです」と呼びかける。 大島さんが備えをする背景には、二つの大地震の体験がある。造船会社が設立した学校の学生だった44年12月7日、大阪から現在の和歌山県古座川町の疎開先に荷物を運んだ帰りの駅で、昭和東南海地震に遭った。翌々年12月21日未明の昭和南海地震も同町の家屋で就寝中だった。近くの古座川を津波が遡上(そじょう)してきたのを鮮明に覚えている。 戦後は鉄鋼メーカーに勤め、神戸の現在の場所に居を構えた。68年に平屋を2階建てに改築した際、柱や壁を通常よりも太くし屋根も軽い構
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