岐阜市の養豚場で二〇一八年九月、国内で二十六年ぶりに確認された豚熱(CSF)。打撃を受けた養豚農家の中で、美濃地域で生産されるブランド豚「美濃ヘルシーポーク」は今年、全ての農家が出荷を再開し、復活へ一歩踏み出した。農家七軒のうち二軒は豚熱の影響で廃業。再開した農家もコロナ禍で輸入が減った餌代の高騰に苦しむが、「さらに気を引き締めて味を追求したい」と前を向く。(中根真依) 豚熱が発生し、全頭殺処分となった各務原市鵜沼羽場町の阿部浩明さん(55)の豚舎。今は殺処分前とほぼ同じ、親豚と子豚を合わせて計千六百頭ほど育てる。空になっていた豚舎に最初の三十頭が来たのは、殺処分から一年以上が過ぎてから。「うれしくて涙が出ました」 発生後、豚舎をつなぐ通路はネズミなどの侵入を防ぐために壁と屋根でふさぎ、外から豚は全く見えない。豚舎に入るときの消毒部屋は一方通行に変えて、餌の袋や資材も、煙で満たしたコンテナ