政府は、患者が病院でどんな治療を受けたのかが分かる診療報酬明細書(レセプト)の膨大な情報を、地域別に分析して白書にまとめ、公表する。医療費や入院費の支出が多い自治体に抑制を促す。肥満の人や予備軍の人を対象に、自治体などがツアーを企画し、地方の旅館やホテルで保健指導することも支援する。 厚生労働省が2015年度予算の概算要求で、医療分野や地方活性化に関する特別枠に盛り込む。 政府は、77億件を超えるレセプトの「ビッグデータ」を使い、15年度にも都道府県ごとに医療費支出の上限目標を設定する方針だ。その一環で、特定健診(メタボ健診)も含めたデータを地域別に集計した「レセプト・特定健診情報データベース白書(仮称)」を毎年作ることにした。白書は公表し、国の財政を圧迫する医療費全体の抑制につなげる。
健康医療はビッグデータ利活用への期待が高い反面、厳格な法規制の下で情報セキュリティのリスクも高い。日本では医療介護データの有効活用によって医療費削減を図る方針が打ち出されたばかりだが、先行する米国はどのような形で取り組んでいるのだろうか。 カルテの電子化からビッグデータ利活用に移行する米国 厚生労働省の医療保障制度に関する国際関係資料によると、2011年の日本の一人当たりの医療費は3213ドルであり、総医療費の対GDP比率は9.6%である。これに対し、米国は8508ドルで対GDP比率が17.7%となっている。年々増加の一途をたどる医療費をどう抑制するかは、日米に限らず世界共通の課題になっている。 日本では2014年8月11日、政府の社会保障制度改革推進本部が地域横断的な医療介護情報のICT化によって「見える化」を進め、各地域の状況を比較した結果を踏まえて医療介護支出の効率化・適正化を図るこ
医療機器に直接触れない環境でのメールやネット利用などが原則として認められた。手術室や集中治療室などでは電源オフやオフラインモードに切り替えることとしている。 総務省や厚生労働省などが参加する電波環境協議会は8月19日、「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」(ガイドライン)を発表した。医療機器への影響の懸念から原則として禁止されていた病院内での携帯電話の利用が大幅に緩和されている。 新ガイドラインは、第2世代(2G)携帯電話サービスの廃止による携帯電話の電波出力の低下や、医療機器の電磁的耐性の性能向上などを背景に、1997年に作成されたガイドラインを見直したもの。スマートフォンやタブレット端末などの普及も受けて、医療機関利用者の利便性と医療機器などの安全性に配慮した内容となった。 病院内での携帯電話の利用は、医療機器に接触するようなケースや手術室、集中治療室といった医療機器が集中す
ヤフーは8月11日、個人向け遺伝子解析サービスを10月に開始すると発表した。病気や薬、健康にかかわる情報を提供する「Yahoo!ヘルスケア」が取り組むプロジェクト「HealthData Lab」において運用する。6月には5000人のモニターを募り、実際の解析とアンケート調査などを実施していた。 このサービスでは、2型糖尿病/脳卒中/腎臓病などの生活習慣病や、肥満/不眠症などの病気、尿酸値/飲酒量などの体質を含めた約300項目を解析する。また、祖先解析も項目に含んでおり、母親から受け継ぐミトコンドリアDNAから「自分と同じ遺伝子を持つグループがどこで生まれてどう移動してきたのか」をたどることができるという。 個人の健康情報を収集して可視化し保存できる仕組み「PHR(パーソナルヘルスレコード)」も提供する。歩数などの日々の運動量、睡眠時間、体重/体脂肪などの情報を、センサが搭載されたスマートフ
DeNAは2014年8月12日、子会社のDeNAライフサイエンスを通じ、一般向け遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」を同日から始めると発表した(プレスリリース)。 利用者は、送付された検査キットを使って自宅で唾液を採集し、DeNAライフサイエンスに返送(写真1)。同社が解析を実施する。胃がん、肺がん、食道がんなど39種のがん、糖尿病、高血圧、心臓疾患など19種の生活習慣病、肥満や肌質などの体質を含め、最大282の項目を検査できる。 価格は、全項目が検査対象になる「オールインワン280+」(2万9800円)、がん、生活習慣病、体質など100項目を検査する「ヘルスケア100+」(1万9800円)、体質を中心に30項目を検査する「カラダ30+」(9800円)がある。 提供を受けた唾液などの試料や遺伝情報、アンケート情報は、匿名IDを付与した上で、「健康長寿社会の実現を目的とした研究」
「HealthData Lab」のゲノム解析サービスは、生殖細胞系列の遺伝子変異を調べることで病気のリスクや体質を予測するもの。ヤフーではサービス開始に先行して、6月には5000人のモニターを募集し、実際の解析とアンケート調査などを実施していた。 ヤフーでは現在も、第2弾モニターとして5000人を募集している。2年以上にわたって健康調査に協力できること、「Yahoo! JAPAN ID」を持っていることなどの条件を満たせば応募可能で、当選者には唾液採取キットの代金、送料、解析費用をヤフーが負担し、通常数万円かかるゲノム解析を無料で体験できるという。 解析項目は、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、肥満といった「病気のリスク」や、血圧、肝機能の指標といった「体質」から約120項目をカバーする。プロジェクト参加者からのフィードバックが蓄積されることで、ゲノム解析の研究の精度が高まるため、新たな解析結果が
内閣府大臣官房番号制度担当室長の向井治紀審議官(写真1)はマイナンバー制度(行政手続き番号法)について、「個人番号カードに健康保険証を早急に取り込んでいく政府の方針は決まっている」と述べた。日経コンピュータが2014年7月30日に開催した「マイナンバー対応実践セミナー」の講演で語った。 個人番号カードは、マイナンバー制度で個人番号と本人の両方の確認ができる唯一のカード。写真付きで、身分証としても利用できる。ただ発行には本人による申請が必要で、普及に時間がかかるとみられていた。個人番号カードに内蔵するICチップの空きスペースに健康保険証の記号番号を入れて機能を付加すれば、健康保険組合のある民間企業などの事業所単位で個人番号カードを配るという普及策も考えられる。 講演で向井審議官は、政府IT総合戦略本部長の安倍首相や自民党などから、健康保険証や公務員の身分証明書として早急に利用できるよう求めら
日本の医療は東北から変わる──そう思わせてくれる計画が、東北地方の中心地宮城県で進んでいる。東日本大震災で大きな痛手を受けた宮城だが、それを逆転の発想で好機ととらえて、一から医療基盤を構築して医療ビッグデータを集め、様々な用途に活用しようとしている。 地域医療連携やゲノムなど5つの医療情報基盤を整備 「東北医療情報ハイウェイ計画」というこの構想は、現在構築中の5つの社会情報基盤を利用して医療情報を集積。医療ビッグデータとして活用することで、地域医療連携と最先端研究のベースを作る目的がある。東北大学大学院医学系研究科教授の中谷純氏が、2014年6月5~7日に岡山県岡山市で開催された「第18回日本医療情報学会春季学術大会」(主催:日本医療情報学会)の特別講演で、詳細に解説した(写真1)。 中谷氏は「震災前よりもよい社会にすることを目指して、構築を進めている。東北だけでなく、未来永劫にわたる国家
神奈川県横須賀市は、国民健康保険者1人当たりの医療費削減を目指して、ビッグデータを活用した保健事業(データヘルス)に取り組む。 横須賀市における特定健診やレセプト(診療報酬明細書)のビッグデータを、個人情報に配慮しながら分析して、被保険者の全体的な健康状況や受診状況、医療費状況を把握し、効果が高い対象者を抽出したうえで、個々の対象者に合った保健事業を展開する。 こうした取り組みにより、被保険者の疾病予防や重症化予防につなげ、「医療費の適正化によって、国民健康保険の保険料等の市民負担の増加を抑制する」(横須賀市長 吉田雄人氏)という。計画策定には、公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンターとミナケアが協力する。 横須賀市では現在、国民健康保険被保険者1人当たりの医療費が、県内19市平均の29万6,811円と比較して1割ほど高い32万8,504円(いずれも2012年度)となっており、県内でも
印刷する メールで送る テキスト HTML 電子書籍 PDF ダウンロード テキスト 電子書籍 PDF クリップした記事をMyページから読むことができます アクセンチュアは7月22日、プライバシーとIT利用に関する調査の結果を発表した。日本の慢性疾患患者の71%は、患者に自らの電子カルテを閲覧する権利が与えられるべきであると考え、慢性疾患患者の54%は、オンラインで自らのカルテを閲覧できることが、プライバシー面でのリスク以上に大事であるという結果が出た。 調査の結果、慢性疾患の患者が持つ懸念は、オンラインバンキング(60%)や店舗でのクレジットカード利用(55%)、オンラインショッピング(57%)などによって個人情報が電子管理されることよりも、電子カルテのプライバシー(47%)の方が少なかった。 慢性疾患患者はカルテの情報をオンラインで閲覧したいと考えているものの、75%は、閲覧手段を知ら
7月9日、日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会(JUMP)が、マイナンバーの医療分野での利用を強く訴えた(関連記事:医療マイナンバーの活用を強く主張、日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会(JUMP)が会見)。今年度から自治体でのシステム整備が本格化するマイナンバー制度は、2015年10月には個人への番号の通知が始まり、2016年1月からスタートする。 ご存じのように、マイナンバーの利用分野は、当初は税と社会保障、災害対策の3分野に限られる。2015年10月の法施行後3年をめどに、「個人番号の利用範囲の拡大」が検討されることになっている。つまり、つまり少なくとも、2018年10月までは他分野での利用はない、というわけだ(関連記事:パーソナルデータ法改正、マイナンバー制度、求められる「民間力」はこれだ)。 しかしJUMPは、早急な医療用マイナンバー、あるいはこれにひも付いた医療用連携符号の
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く