どうもこんばんは、サラダ坊主です。今夜は三島由紀夫の代表作である『金閣寺』(新潮文庫)に就いて書きたいと思います。 戦後間もない昭和二十五年の夏に起きた鹿苑寺(金閣寺)への放火事件に題材を取ったこの作品は、恐らく綿密な取材の上に成り立っているのでしょうが、読後の感想は「金閣寺放火事件」の実相を克明に物語った実録的小説という風な印象とは全く異質なものです。題材は現実の事件から抽出されていても、「金閣寺」という具体的な実作において結晶しているのは、金閣寺へ火を放った僧侶の具体的な姿ではありません。あくまでもこの小説は作者=三島由紀夫の内なる「思想」や「美意識」の発露したものであり、金閣寺放火という事件は単なる「表層」或いは「舞台設定」の域を出ないのです。 格調高い文体で綴られる実に観念的な「思想」の数々は、三島由紀夫という存在の内部に胚胎したものであり、それは現実の反映であるというよりも、現実