【前回のあらすじ】 才色兼備の少年深見頼母を、恋い慕う男は多かったのですが、侍従のお気に入りだったので、番人を立てられて、恋の道は固く禁じられていました。 --------------------------------- 霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ 男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション ※赤字の書入れ等は筆者。 【原文】 (既に十六夜の春を迎へぬ夕つ方、南面の格子《かうし》を開けさせて、)脇息《けうそく》を押さへて、花の盛りをなだらかに打ち眺《なが》めたる顔付き、いとらうたげで匂やかなり。 斯《か》かる所に、同じ流れに住みける三好采女《みよしうねめ》と言ゝて、是も十と言ゝ八ばかりも余り侍らん、人柄もいと健《すく》やかに、流石《さすが》形も麗《うる》はしふ有りけるが、脇息の風情《ふぜい》、世に怪しく、心惑《こころまど》