日本のマンガにおけるSFには「SF=すこし・不思議」という考え方がある。言わずと知れた藤子・F・不二雄の提唱した考え方で、おおざっぱにいえば「日常のなかに少しだけ不思議な(SF的)要素を入れ込むという物語のつくりだ。 わかりやすく『ドラえもん』でいえば、小学生のありふれた日常に、ドラえもんという架空の存在が放り込まれることで物語が生まれている。ベースとなるのび太たちの生活は(多少の時代とのギャップはありつつも)ごくごく普通のものだからこそ、スッとその世界に入っていける。 それでいうならば、九井諒子の『ダンジョン飯』は「SF=すこし・普通」だ。 『ダンジョン飯』は、その名のとおり、RPGのような世界のダンジョンでの食生活を描いた作品だ。主人公たちのパーティは、最奥部でドラゴンに食べられた仲間を救出するためにダンジョンへと潜るが、資金難のために食料が確保できず、ダンジョン内で自給自足を迫られる