光嶋敏雄さん(左)のハーモニカの演奏に合わせてハミングしたり体を動かしたりする若年性認知症の妻・早代子さん=10月、熊本市中央区(後藤仁孝) 「赤とんぼ」「もみじ」「五木の子守唄」-。哀愁を帯びたハーモニカの音色が響くと、それまでうつろな表情だった光嶋早代子さん(60)=熊本市中央区=は手足でリズムを取り始め、自然とハミングが漏れ出した。それは次第に“歌”となり、言葉が紡ぎ出されていった。 【動画】認知症の妻へハーモニカの音色 早代子さんは6年前に若年性アルツハイマー型認知症と診断された。症状は徐々に進行し、今では会話もままならない。ハーモニカは、夫の敏雄さん(69)が「音楽が認知症にいい」と、昨年1月に習い始めたものだ。 「まっとうやが好きなの」。興に乗り出した早代子さんは演奏が終わると、自ら松任谷由実の「ルージュの伝言」を口ずさみ始めた。「自然と体が動きだすなんて、音楽の力はすごい」。