――『源氏物語』は不敬ではないのか? にもかかわらずこれだけ読まれてきたのは いったいなぜなのか? 三浦の疑問に、原が答える。 三浦 不敬と言えば、ずっと疑問だったんですが、『源氏物語』は相当不敬な話ですよね? それなのにどうして、発表当時から宮中であれほど読まれたんでしょう。平安時代にはどういう感覚でみんなが読んでいたのか、とても不思議なんです。 「女御にょうごと密通してできた子供が天皇になっちゃうって、実際にもあるかもね」「やあだ、これはあくまでもフィクションよ」「いやいや、そうとも言いきれなかったりして……」といった感じで、宮中の人々はキャイキャイと受け止めていたんでしょうか。 もし、戦前・戦中に『源氏物語』が新作として発表されたら、紫式部は不敬罪で確実に捕まるんじゃなかろうかと気が揉めるんですが。不敬という概念は、明治以降に厳しくなったんですか? 原 一夫一婦制が確立されたのは、皇