最近、中国で「帰雁経済」という言葉が聞かれるようになった。「帰雁」とは文字通り雁の群が海を渡って故郷に帰るように、人々が都会を離れて故郷に帰り始めた様子を表わした言葉だ。 大都市の生活コストが上昇する一方、農村部の富裕化、都市化が進み、これまで都会に出て働いていた人たちが故郷やその周辺の都市に戻る現象は、この10年ほど、次第に顕著になりつつあった。今回のコロナ禍で、都会の生活に不安を感じる人が増え、その動きが加速しつつある。日本でも私が子供の頃、「出稼ぎ」という言葉は日常的に使われていたが、経済成長とともに、いつしか死語になった。中国もそういう時代が来たように見える。 過去40年間の「改革開放」の時代、都市部と農村部の経済格差、人々の所得格差は中国経済成長の原動力のひとつだった。しかし、そのような時代は終わり、逆に格差の縮小、つまり内陸部、農村部の発展を国の成長の原動力にする時代になる。経