私が2023年7月、上梓した『太平洋戦争の真実 そのとき、そこにいた人は何を語ったか』(講談社ビーシー/講談社)は、これまで約30年、500名以上におよぶ戦争体験者や遺族をインタビューしてきたなかで、特に印象に残っている25の言葉を拾い集め、その言葉にまつわるエピソードを書き記した1冊である。日本人が体験した未曽有の戦争の時代をくぐり抜けた彼ら、彼女たちはなにを語ったか。 自由にものが言えない時代 昭和19(1944)年2月17日、日本海軍の中部太平洋の拠点・トラック島が、アメリカ海軍機動部隊の艦上機の猛攻を受け壊滅した。この事態に、東條英機内閣は19日、一部の閣僚を交代させる内閣改造を行い、さらに21日には、行政と軍の統帥を分離する従来の慣例をやぶって、軍需大臣、陸軍大臣も兼務する東條首相(陸軍大将)が陸軍統帥トップの参謀総長を、海軍大臣嶋田繁太郎大将が海軍軍令部総長を兼務する人事を断行