翌朝、目が覚めると…… 翌朝、さいわいにして腹は壊さなかった。帰りのフライトは午前9時15分の便なので、早朝のうちに近所を3キロくらい走っておく。島内に信号機はひとつしかなく(これも島の子どもが島外に出たときのための学習用らしい)、車もほとんど走っていないのでランニングには最適だ。 やがて、在所を離れた沼地に掛かる月見橋までやってきた。このまままっすぐ進んで県道に合流し、左に曲がって道なりに進めば旧空港跡。すなわち、先日訪れた株式会社グレイス・ラムがある。 島内にある唯一の信号。島の子どもが島外に出たときに困らないように、実用的には意味がない信号をひとつだけ設置するのは、東京都の青ヶ島をはじめ「離島あるある」であるらしい。 「……ここに来たお客さんは2ヶ月ぶり」 ふと、社屋内にいたおじさんを思い出した。今後も当分、あの社屋を尋ねる島外の人はほとんどいない。コロナ禍のなかでは海外旅行はもちろ