いま専門家たちの間で注目されている「エゴドキュメント」。人びとの言論の自由が制約された時代に、表だって言えなかった“本音”を記した日記や手記、私信などを指す。 今から80年前の太平洋戦争で、日本は自らを盟主とする「大東亜共栄圏」の建設を掲げ、欧米の植民地だった東南アジアの国々を次々と占領した。アジアとの共存共栄、その理想と現実はどのようなものだったのか? 今回私たちは、アジアの軍政に関わった軍人の日記だけでなく、アジアの人たちのエゴドキュメントも多数入手した。証言者の多くが鬼籍に入る中、当時を知るための貴重な資料だ。占領に関わった日本人、そして占領下での暮らしを余儀なくされた現地の人々は、何を見、何を思い、生きたのか。“大東亜共栄圏”の姿をたどった。 (NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争」取材班 酒井有華子 高瀬杏)