終始にこやかな二人の会話だが、両の手元ではお互いぎりぎりと鳴く剣を握り続けている。少しでも気を抜けば、即座にその剣は弾き飛ばされそうだ。 「いいかい、分隊長さん。ハルピュイア・クインの【魅(・)惑(・)的(・)な(・)声(・)】で縛られた操り人形は、体に一定以上の強い衝撃を与えられると、一旦は解ける」 「一旦?」 リュシェルの足がぐっと力を込めて地を踏みしめる。 「ああ、一旦だ。あとはかけたやつの能力がどれほどかで、どこまで使役させられるか決まる。聞いた話、力が強すぎるやつは縛りがなくとも使役できるそうだ。つまり、死(・)体(・)で(・)も(・)動(・)か(・)せ(・)る(・)」 ザイストはぞっとした。 「死者の軍団か」 「現代でそこまでやれるやつはいないだろうけど、ねっ」 リュシェルの剣がするっとザイストの刀身を滑る。半分を過ぎたあたりで彼女は腕の力を一瞬だけ緩め、そのままくるりと翻って