──著書『 滅私 』はミニマリストの男を主人公としています。所持品をできる限り減らし、最低限の物だけで暮らす「ミニマリスト」。日本でこの言葉やスタイルが広まりだしたのは2015年ごろだといわれますが、根強いブームがまだ続いています。小説に取り入れようと思った、着想のきっかけを教えてください。 ミニマリストたちの極端な生活スタイルそのものよりも、メディアやSNSで彼ら彼女らが発している言葉に違和感を覚えたのがきっかけです。「人生を最大化する」「物より経験」など、みな一様に、コピーしたように単語レベルで同じフレーズを多用していました。どこかで見聞きした他人の言葉を、咀嚼(そしゃく)しないでそのまま自分の言葉として発信している。 僕自身も片付け好きではあり、来客には「物が少ないですね」と言われますが、見えるところに置いていないだけで所持品自体は多い。引っ越しでも「単身パック」では足りずに、2トン