完全に日が暮れるまでに峠を越えられるかなと思って、うねうねした山道を車で登っていたらゲリラ豪雨がやってきた このまま走り続けて、スリップして山から真っ逆さまに落ちるなんてことは嫌だったし、路肩に車を停めてこんな山奥で待つのも嫌だった だからロードサイドに「カプセル」と書かれた看板が目についた途端、すぐにハンドルを切って敷地内に入った 建物に入ると、中は雨の音なんて聞こえなくて、静まりかえって真っ暗だった 「おひとり様ですか」と声をかけられて振り返ったら、壁が半円形にくり抜かれてそこから光が漏れていて、カウンターらしきものになっていた 奥にいる人の顔は見えなかった ひょっとしたらそういう所に間違えて入ってしまったのか、でも「カプセルホテル」と書いてあったような、と思いながらも、連れがいると言うわけにもいかず、「はい一人です」と答えた 「32番どうぞ、奥へ」とカウンターに差し出された手の下には