主役はダーク [著]須藤靖/科学を語るとはどういうことか [著]伊勢田哲治 『主役はダーク』は破格の科学エッセーだ。最新の天文学、宇宙物理学を独特の諧謔(かいぎゃく)を交えて語る。 宇宙は膨張しており、物質は希薄になっていくはずなのに、我々の世界(例えば地球)が物質に満ちているのは、ダークマターのおかげらしい。いまだ直接観測されていないが宇宙の22%を占め、局所的な密度を上げるのに貢献しているという。一方ダークエネルギーはさらに圧倒的で宇宙の74%! 万有引力ではなく、互いに反発する斥力を働かせ、宇宙が一貫して膨張する性質を与えてきた。どちらも物理学で真面目に議論される有力仮説だ。 ともすれば難しくなりそうなテーマだが「最近の世の中は何か暗い」の一文で始まり、国家予算の赤字やら大学生の就職率について嘆きつつ、気づけば宇宙のど真ん中に誘われている。爆笑、苦笑と科学が隣り合わせる筆さばきだ。