私はハードワークが好きな若者だった。 大卒で「忙しい」「激務」と言われる業界に入って4年、「生活」らしい生活をないがしろにして最近まで過ごしてきた。 深夜まで働いてタクシーで帰るとき、車窓から見える誰もいない街は嫌いじゃなかったし、仕事仲間と夜更けに飲むビールは美味しかった。 社会に自分のやるべきことがあり、ちゃんと必要とされていて、そこに身を投じる毎日は刺激的だ。文句も愚痴ももちろんあるけれど、それすら上がり下がりの激しい毎日を演出する要素の一部のように感じていた。 生活や自分の心身を多少ないがしろにしていたとしても、仕事を通して得られる劇物のような快感や充実感には取って変えられないし、なんならちょっとぐらい忙殺されているほうが社会人として格好がつくとさえ思っていた。 しかしその日は唐突にやってきた。去年の夏のことだ。 朝起きると、背中が痛い。 ちょうど肺のうしろ側の背中が痛いので呼吸も