■二つの600m級タワー:正力タワーとNHKタワー 1960 年代末、二つの600m級電波塔が東京で計画された。 一つは1968 年に日本テレビが計画した高さ550mの「正力タワー」。 もう一つは、その翌年にNHK が発表した高さ610mの「NHK タワー」だ。 いずれも、完成すれば世界一の高さだった。634mの東京スカイツリーが完成する約40 年前のことだ。 テレビ放送開始以来の因縁を持つ日本テレビとNHK は、政界も巻き込む鍔迫り合いを演じ、東京タワーが既に存在していたにも関わらず自らの塔の実現を画策した。 ■世界初の屋根付き球場計画:正力ドーム 高度成長期の東京で計画されていたのは巨大電波塔だけではなかった。 東京タワーが完成した1958 年、日本テレビの正力松太郎会長は、8 万人(のち6万5千人に変更)を収容する屋根付き球場「新宿コロシアム」の実現に乗り出した(本書では「正力ドーム