以前読んだ時の読書録。前半部分については理解に苦しむ面が多いものの、この本の面白さは、p164以降の「バベルの図書館」論とインターネット批評にあると思う。 図書館という知の秩序は、ある意味で、資料という質感に対する愛着で成り立ってきたとも言える。その愛着によって、図書館が引き受けるあらゆる古典的な知の秩序が、連綿と継承されてきたとも言える。ところが、コンピュータやコンピュータ・ネットワークの拡大により、物理的な質感への愛着だけでは知の秩序を構想できなくなってきた。ディジタル信号で記録された映像やハイパーテキストといった電子化された資料のように、メディアに備わったロゴスへ翻訳された資料には、介入の余地を与えるというこれまでにない能力が用意されているのだ。 従来の書物への「介入」の方法は限られている。本に線を引くとかコピーを取るとか、せいぜいその程度である。紙のメディアはこれまで五〇〇年あまり