災害に見舞われた直後は、みんなで助け合ってこの困難を乗り切ろうの機運が被災地に生まれる。これを災害ユートピアという。3ヵ月くらいはこれが続く。しかし、すべてのユートピアが幻想であるように、災害ユートピアも幻想である。やがて打ち砕かれる。 住民と行政の利害は、じつは一致しない。行政も、国・県・市町村の階層ごとに利害が激しく対立する。国と県が協力して知恵を出し合ってこの災害を乗り越えましょうは幻想である。そこには激しい緊張関係が存在する。 この意味で、松本復興大臣が県知事に言った「知恵を出さないやつは助けない」は、相手の立場を思いやったたいへん親切なことばだった。しかしこれを、ジャーナリズムが悪意を持って報道し、それを見た住民とその他の日本国民が情緒的に反応して大臣を辞任に追い込んだ。大臣は、その言葉を住民に向けて語ったのではなかった。県知事を諭したのだった。 みずから工夫して努力しようとせず