本年9月の自民党総裁選以降、金融所得課税の強化に向けた議論が注目されている。所得が1億円を超える高所得層で、所得が増えるほど所得税負担率が低下する(逆進的になる)ことが、所得再分配の観点から問題視された(いわゆる「1億円の壁」)。その要因として、高所得層では、分離課税される金融所得の税率が総合課税される労働所得等の累進税率よりも低いなか、所得全体に占める金融所得の割合が高いことが指摘されている。 金融所得を労働所得等と分離し低めの税率で課税する制度は、各国で採用されている。経済のグローバル化やデジタル化を受けて、世界的にみて、国境を越える移動が容易でない労働所得等への課税が重くなる一方、国境を越える移動が容易な金融所得等への課税が軽減される傾向にある。 金融所得課税の強化に際し、分離課税のまま税率を引き上げる場合、税負担や金融市場への影響を見ながら段階的な引き上げが可能であるものの、①引き
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