広江礼威『ブラック・ラグーン BLACK LAGOON』 海賊モノは、少年の冒険物語の定番ともいえる。 猥雑な活気、近代の物語に特有な、将来にむけての明るさが特徴だ。読者を主人公へ強く同化させる。 本作は海賊の物語である。 少年むけのそれとは逆に、物語世界からはファンタジックな調子が追放され、きわめて苛酷で峻厳な設定がされている。 海賊のメンバーはいずれも米国人だが、ベトナム戦役くずれのアフリカ系(ダッチ)、メカフリークのユダヤ系(ベニー)、そして「二挺拳銃(トゥーハンド)」と渾名される中国系の少女(レヴィ)。そこに日本人の主人公の元商社員・岡島緑郎(ロック)が加わる。カネになるものなら、どんなに危険なものでも運び、必要なら相手をためらわず殺害する。依頼主も、ロシア系や中国系のマフィアで、やはり障害があれば相手を殲滅し徹底的に利潤を追求する。 「仕事」を遂行する様は、実にクールだ。 困難に