ベストセラー作家にして敏腕放送作家。そして「保守」論客。作品が、発言が、そしてその存在が、これ程までメディアを賑わせた人物がかつて存在しただろうか。「憂国の士」と担ぎ上げる者、排外主義者として蛇蝎の如く嫌う者、そして大多数の「何となく」その存在に触れた人々……。百田尚樹とは、何者か。しかしながら、その重要な手がかりであるはずの著作が論じられる機会、いわば「批評」される機会は思いのほか稀であった。気鋭の批評家と文芸評論家が全作品を徹底的に論じる。 杉田 この対談では、百田尚樹の作品をぜんぶ読んでみます。ぜんぶです。もちろん、まじめに読んでみる。そして全作品について我々でコメントし、論評し、批評していきます。読者の皆さんのことを考えて、ブックガイド的な意味も込めていくつもりです。 では、なぜそういうことをやってみたいのか。 近年の百田尚樹は、ネットやメディア上の問題発言で多くの批判や炎上を巻き