記憶や言葉が失われていく認知症患者が行方不明になると、どうなるか。保護されても自分の名前や住所を言えず、家族の元に戻れない。自宅の近くなのに、誰も探さない狭い場所に潜りこみ、体力を失っていく。そんな事例が年間1万人。日本の高齢化社会の行く末を考える。 昨日まで家族で食卓を囲んでいた父親や母親が、ふらりと家を出たまま戻らず、消息不明になったら。 そしてどこの誰かも判別されないままにどこかで暮らし、家族を恋しく思っているとしたら? 高齢ゾーンに足を踏み入れかけている両親を持つ身としては、想像しただけで背筋がひやりとし、耐えがたい。 名前があるのに、自分では伝えられない。 保護した側も手がかりを探すものの、多くは着の身着のままで保護されていてわからない。 結果、仮の名前と推定年齢のまま、特別養護老人ホームなどで人生を過ごす。 そんな高齢者がいるのだという。 しかもひとりやふたりではなく。 「亡く