貨幣改鋳者としての哲学者 ソクラテスは神託を受けて哲学者としてデビューし、キニクのディオゲネス(樽の中の哲学者)もまた神託を受け、まずは貨幣改鋳者(贋金造り)としてスタートした。 ソクラテスは著名な知恵者のところへ赴き、問い尋ねることで、知恵者の持つ知が偽物であることを、知恵者が無知であることを、明るみにだした(それで彼はひどく怨まれたし、処刑されもした)。 ディオゲネスに下された神託は「ポリティコン・ノミスマ(国の中で広く通用してるもの=諸制度・習慣=道徳・価値)を変えよ」といったものだった。彼はそれに従って、実際に通貨=価値を変えてみせた。ディオゲネスはそのため、国外に追放されたのである。 ソクラテスは、つまり通用している知が「贋金」に他ならないといっているのであり、一方ディオゲネスはあえて貨幣偽造を行ないそれを発行することで、あらゆる通貨が「偽物」に過ぎないことを示して見せてい