その日も僕は、いつもの上りホームでいつものようにいつもの電車を待っていた。1月の寒い朝だ。吐く息が白い。話のわからない上司。ルーティーン化した仕事。課せられたノルマ。「会社行きたくねえなあ」思わずつぶやいてしまいそうになる。ふと周りを見る。新聞を読んでいるおじさん。スマホでゲームに興じる若者。ぼうっと前を見つめる僕と同年代のスーツ姿の男。いつもと何も変わらない。少し落胆が混じった落ち着きを覚える。スピーカーから駅員の声がした。踏切に車が入って…安全確認が…とかなんとか。誰も反応しない。受け入れているのか。諦めているのか。僕の中にある「会社行きたくねえ風船」が少し膨らんだ。「この風船が破裂しないように」と祈るような気持ちでずっとやってきた。同じホームで25年。会社や仕事は変わってきたが、上り電車が職場へ向かうもので、下り電車が海へ向かうものであることは、太陽が東からあがるように当たり前で、変