ブックマーク / sekibang.blogspot.com (5)

  • 平山昇 『初詣の社会史: 鉄道が生んだ娯楽とナショナリズム』

    新年の伝統行事として親しまれている「初詣」。古来から日人は初詣をしてきた……ようなイメージを持っている人が多いだろうし、日人として育ったなら初詣にいくのは当たり前でしょ? ぐらいに思っている人は多そうだ。 そういう行事が実は近代以降の「創られた伝統」、つまりはコンビニなどによる恵方巻ブームや、製菓メーカーによるヴァレンタインチョコレート、とそんなにレヴェルが変わっていない、というのはショッキングな話であるし「そんなハズはない! ウチでは先祖代々、新年には初詣をしてきたんだ!」と怒り出す人さえいるかもしれない。しかし、歴史家たちの調査によれば、初詣という言葉が一般的になるのは明治時代以降の話、それまでそういう風習は日に見られなかった。 この「初詣 = 創られた伝統」説の指摘は、書の著者が初めて行ったわけではなく、20年前に別な歴史家が指摘している。しかし、これまでの研究者が「初詣を明

    平山昇 『初詣の社会史: 鉄道が生んだ娯楽とナショナリズム』
  • アンソニー・グラフトン 『テクストの擁護者たち: 近代ヨーロッパにおける人文学の誕生』

    翻訳作業のお手伝いをしたアンソニー・グラフトンの『テクストの擁護者たち』を読み終える。書の内容については、すでに原書を紹介したときにもあらかた書いてしまったが、改めてどんななのか紹介しておこう。 書はルネサンスから近代という長い時間軸のなかで当時の知識人たちがどんな風にテクストを読んだり、肯定したりしたのか、という知の営みの歴史を扱っている。そこで登場するのは、たとえば、デカルトだとかスピノザだとか、西洋思想史界のスーパー・スター的な人物たちではない(第7章で扱われているケプラーが例外か)。「歴史」のなかでほとんど無視されてきたような、知識人たちである。そうした忘れられた知識人たちによって、文献学やテクスト校訂の技術が培われ、現代にまで引き継がれる礎を作られたのだ……というのが、書のおおまかなストーリーになるだろう。 特筆すべきなのは、グラフトンの歴史記述の方法だ。これは書巻末に

    アンソニー・グラフトン 『テクストの擁護者たち: 近代ヨーロッパにおける人文学の誕生』
  • ロレイン・J・ダストン キャサリン・パーク 「怪物:事例研究」

    引き続き、坂さんからいただいたダストン & パークの作品を読みました。こちらの「怪物:事例研究」(書誌情報)は『ユリイカ』に掲載された『驚異と自然の秩序』からの部分訳。いまではちょっと高級なサブカル雑誌になってしまった感のある『ユリイカ』にもこんな文章が掲載されていた時期があったのですねえ、というのが感慨深いですが、それはさておき内容の紹介と参りましょう。「反−自然の概念 十六、七世紀イギリス・フランスにおける畸型の研究」とかなり重複するものがありますが、ここで紹介されているのはおもに畸型が神が人間に送ったメッセージなのではないか、なにか悪いことの予兆なのではないか、と解釈されていた時代のお話で、実際に畸型のイメージがどのように解釈されていたのかを資料的に見ていくものになっています。 頭には剣のようにまっすぐ突き出した角。腕の代わりに蝙蝠のような翼。胸の上部をみると、片側にはフィオが、そ

  • 自叙伝によるカルダーノの解剖、そしてある女性研究者の肖像(榎本恵美子 『天才カルダーノの肖像: ルネサンスの自叙伝、占星術、夢解釈』)

    ジローラモ・カルダーノの名前は、一般的に知られている人物とは言えないだろう。彼が生きたルネサンスの思想や科学を扱った文献では頻繁に言及されているものの、あくまで個人的な読書歴のなかでの話だけれど、それ以外の領域では、数学を読んでいたら四次方程式の解法を示した人物としてでてきたことがあるぐらい。医師であり、占星術師であり、数学者であり、自然哲学者……こうした様々な肩書きで扱われるカルダーノは、ダ=ヴィンチの多彩さが引き合いにだされるようなルネサンス的知識人の典型として考えられる。当ブログではカルダーノを以下のエントリーで扱っている。 ジェロラモ・カルダーノ『わが人生の書 ルネサンス人間の数奇な生涯 』 アンソニー・グラフトン『カルダーノのコスモス ルネサンスの占星術師』 前者は彼自身による自叙伝、後者は思想史家による研究書についての感想だ。これらのを読んだとき興味深く思われたのは、カル

    自叙伝によるカルダーノの解剖、そしてある女性研究者の肖像(榎本恵美子 『天才カルダーノの肖像: ルネサンスの自叙伝、占星術、夢解釈』)
  • Ann M. Blair 『Too Much to Know: Managing Scholarly Information before the Modern Age』

    テクノボン posted with amazlet at 11.05.05 石野 卓球 野田 努 JICC出版局 売り上げランキング: 100028 Amazon.co.jp で詳細を見る 石野卓球と野田努による対談形式で編まれたテクノ史。石野卓球の名前を見た瞬間、「あ、ふざけたですか」と勘ぐったのだが意外や意外、これが大名著であって驚いた。部分的にはまるでギリシャ哲学の対話篇のごとき深さ。出版年は1993年とかなり古いではあるが未だに読む価値を感じるだった。といっても私はクラブ・ミュージックに対してほとんど門外漢と言っても良い。それだけにテクノについて語られた時に、ゴッド・ファーザー的な存在としてカールハインツ・シュトックハウゼンや、クラフトワークが置かれるのに違和感を感じていた。シュトックハウゼンもクラフトワークも「テクノ」として紹介されて聴いた音楽とまるで違ったものだったから。

    Ann M. Blair 『Too Much to Know: Managing Scholarly Information before the Modern Age』
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