ブックマーク / kaikaji.hatenablog.com (33)

  • ハイチとIMF - 梶ピエールのブログ

    W.イースタリー『傲慢な援助(The White Man's Burden)』170〜172ページより。 次のトリビア的質問に答えてほしい。過去50年間でIMFから最も多くのスタンドバイ融資*1を受けたのはどの国か?答はハイチであり、22の融資を受けた。しかもハイチの国というより、デュバリエ家(パパ・ドックとベビー・ドック)であった。この二人の統治下で、ハイチは1957〜86年の間、22中20のスタンドバイ融資を受けたのである。 政治が悪かったが、デュバリエ家が経済もさらに悪化させた。ハイチ国民の平均所得は、デュバリエ政権誕生時よりも末期の方が低かった。パパ・ドックが政権を握った時、全子どもの半数が小学校に通えなかった。ベビー・ドックが政権を去った時も、半数の子どもがやはり学校に通っていなかった。 独立以来おおよそ200回のクーデター、革命、暴動、内戦を経て、ハイチは今でも世界で最も

    ハイチとIMF - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2010/02/13
    イースタリーの語るハイチ。悪いガバナンスが低成長や災害時の問題につながっている。
  • 「天皇に「私(わたくし)」なし」という神話 - 梶ピエールのブログ

    少し前のことになるが、事実上胡錦濤国家主席の後継者と目されている習近平国家副主席が訪問し、天皇との会見を行ったことが、天皇が外国要人と会見する際に通常適用される「1か月ルール」に従っていなかったとして物議を醸した。この事件はいくつかの点で非常に重要な意味を持っていると思うので、ここで改めて考えてみたい。 まず、目立ったのは産経新聞など右派系のメディアを中心にした、これは党内に権力闘争を抱える習近平が天皇の政治利用をしている、けしからん、という論調の批判的な報道であった。 天皇を政治利用している=礼儀知らず、という習氏への否定的なイメージは、たとえばこの後カンボジアの訪問の際に7月5日のウルムチの騒乱の際に亡命し難民申請を行っていたウイグル人20人の強制送還が行われたとの報道により、さらに強化されたかもしれない。 確かに、人道的観点からカンボジア政府の決定が責められるべきものであるのはいうま

    「天皇に「私(わたくし)」なし」という神話 - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/12/28
    対中国のことは置いておいて考えると、やはり天皇制と宮内庁っていう役所がこういう問題を起こす元凶だと思う。現在の宮内庁幹部は外務省出身者が多いと思うんだが、それも外交がらみの問題の元にならないか?
  • 解説しよう。 - 梶ピエールのブログ

    二回にわたって紹介した『財経』の記事について私なりに少し説明を加えてみよう。 http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20090625 http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20090627 この記事は地方政府が暴走気味の投資計画をかけ、そのための資金調達に奔走し始めていることに警鐘を鳴らした特集のまとめの文章である。なおこの『財経』という雑誌は2003年当時の上海周辺の土地バブルをめぐる地方政府と不動産会社の癒着を厳しく糾弾したほか、農村における土地収用と「失地農民」の問題や国有企業幹部のMBOを通じた利権の獲得などの問題についてもいち早く取り上げてきた実績があり、この手の批判的な報道については中国国内で最も信頼性の高い媒体といってよい。 危機後の中国の景気回復策とその効果については、中国政治が非民主的で権威主義的であり、意思決定が集権的でスピ

    解説しよう。 - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/07/12
    中国の財政・金融のすばやい緩和策が全体としてみれば正しい反応であったことは疑いがない。しかし、それは中央政府がブレーキをかけることができないほどの地方の暴走を促しかねないという副作用を伴ったものである
  • 積極果敢な、あまりに積極果敢な - 梶ピエールのブログ

    いまや中華圏、いや東アジアで最も重要な経済誌と言ってよい、『財経』の一つ前の号が今日手元に届いたが、その中で「地方政府融資的狂歓」という特集記事が目に付いた。現在中国で起こっていうことがどういうことなのかを理解するのに格好のテキストだと思うので、とりあえず下手な論評を加えないでその一部を訳出することにしたい。細部で間違っているところがあるかもしれないが、その辺はご勘弁を。 地方政府:融資のお祭り騒ぎ 「金融危機」は一体どこへ行ったというのだ?今や、地方政府による融資のお祭り騒ぎが始まっている。どの地方政府も、長らく待ち望んだこの幸福な時間を徹底的に味わいつくそうとしている。 地方政府は「融資プラットフォーム(以下、プラットフォーム)」という手法を思いのままに駆使している。これは、「都市建設投資集団」という枠組みを用いて、地方政府が土地開発を大々的に行うものである。このようなプラットフォーム

    積極果敢な、あまりに積極果敢な - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/06/26
    中国の財政・金融出動の一つの帰結。地方政府にとってまたとないチャンス
  • 村上春樹と竹内好―「近代」の二重性をめぐって - 梶ピエールのブログ

    http://blog.tatsuru.com/2009/06/06_1907.phpより。 ムラカミ・ワールドは「コスモロジカルに邪悪なもの」の侵入を「センチネル」(歩哨)の役を任じる主人公たちがチームを組んでい止めるという神話的な話型を持っている。 『羊をめぐる冒険』、『ダンス・ダンス・ダンス』、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』、『アフターダーク』、『かえるくん、東京を救う』・・・どれも、その基構造は変わらない。 「邪悪なもの」は物語ごとにさまざまな意匠(「やみくろ」や「ワタナベノボル」や「みみず」などなど)をまとって繰り返し登場する。 この神話構造については、エルサレム賞のスピーチで村上春樹自身が語った「壁と卵」の比喩を思い浮かべれば、理解に難くないはずである。 このスピーチでは、「邪悪なもの」とは「システム」と呼ばれた。 「システム」はもともとは「人間が作り出した

    村上春樹と竹内好―「近代」の二重性をめぐって - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/06/13
    村上春樹の小説は、後進国における近代化の二重性の問題を扱っている。「「システム」はそれ自体が邪悪なものなのだろうか」という問いかけも重い
  • 『アニマルスピリット』の議論の原型 - 梶ピエールのブログ

    アニマルスピリット 作者: ジョージ・A・アカロフ,ロバート・シラー,山形浩生出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2009/05/29メディア: 単行購入: 11人 クリック: 154回この商品を含むブログ (67件) を見る http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20051118#p2より 先日、UCBの経済学部主催のセミナーで、コーディネータであるアカロフ先生が御大自ら行ったレクチャーを聞く機会があった。「ケインズ経済学の逆襲!」というのは僕が勝手にそう呼んでいるだけで、'the Missing Motivation in Macroeconomics'というのが講演の当のタイトルである。タイトルだけでなく以下の講演のまとめも、あくまで梶ピエールの理解によるものなので、必ずしもアカロフ先生の意図を正確に伝えていない可能性があるが、ご人がこれを読んでク

    『アニマルスピリット』の議論の原型 - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/06/05
    アカロフの講演と「アニマルスピリット」、5つの中立性に関する仮説への批判がそのまま書籍に結実
  • ザ・ポリシー・ミックス - 梶ピエールの備忘録。

    『日経済新聞』5月22日付記事より。 【北京=高橋哲史】中国の国家発展改革委員会は21日、昨年11月に打ち出した総投資額4兆元(約55兆円)の景気刺激策について、4月末までの実施状況を発表した。低価格住宅を21万4000戸建設したほか、445キロの高速道路が完成した。中国政府が短期間に、大規模な公共投資を集中的に実施したことを裏付ける内容になっている。 4兆元のうち、中央政府が負担するのは1兆1800億元で、すでに2300億元を支出している。発展改革委は中央政府がこの資金で実施している事業の進ちょく状況を公表した。 それによると、4月末までに完成したのは農村道路2万キロ、農村部の送電網4万キロ強、空港の旅客ターミナル10万平方メートルなど。重点項目の1つである鉄道整備については「黒竜江省ハルビン―遼寧省大連」「湖北省武漢―広東省広州」「広西チワン族自治区南寧―広州」間などで建設が加速して

    ザ・ポリシー・ミックス - 梶ピエールの備忘録。
    saka-san
    saka-san 2009/05/26
    本当に経済状況の回復が見られるかどうかは異論もあるが、経済財政政策のポリシーミックスが行われていることは間違いない
  • 中国と「ドルの罠」 - 梶ピエールのブログ

    http://www.voxeu.org/index.php?q=node/3551より。 この論説の著者、Domingo CavalloとJoaquin Cottani(わたしはどちらも知らんかったが)によれば、中国などの新興国が保有するドル資産価値の下落リスクを避けるために為替介入を行い、結果としてさらに外貨準備を溜め込んで過剰流動性を生じさせている問題(「ドル・トラップ」問題)について、今のところ有力な二つの立場があるという。 1つ目の立場は、4月に行われたG20で中国政府により提案された(主要な論者は周小川・人民銀行行長ならびに余永定・社会科学院世界経済政治研究所所長)、新興(債権)国が外貨準備をドル建てからSDF建てに切り換えることにより「ドルの罠」から逃れようというもので、フレッド・バーグステンなどが支持を表明している。具体的には、IMF改革を通じてSDR建ての債券を発行できる

    中国と「ドルの罠」 - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/05/17
    「日本が不況脱出にもたついている間に世界は着々と、中国をメインアクターとする形で「危機後」の国際通貨秩序のありかたについて真剣に議論し始めているようだ」
  • セン・イースタリー論争(?)を読む(下) - 梶ピエールのブログ

    前回のエントリで取り上げた、センのNYRの論説に対しするイースタリーの「マオイズムへのノスタルジア」という批判はフェアなものではない。センの主張を評価するには、それが彼の従来からの「貧困」「飢餓」「飢饉」に関する独自の見解(権原アプローチ)に接合される形で展開されている、ということを理解しなければならない。 ただし、NYRの記事だけからは確かにその点はわかりにくい。そこで参考になるのが翻訳も出ている『貧困と飢饉』、およびその巻末に掲載されている1991年の講演「飢餓撲滅のための公共行動」であろう。 貧困と飢饉 作者: アマルティアセン,Amartya Sen,黒崎卓,山崎幸治出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2000/03/22メディア: 単行購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (14件) を見る そこでセンは、飢餓・飢饉を「権原の失敗」として捉えるべきだ、という視

    セン・イースタリー論争(?)を読む(下) - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/04/21
    毛沢東時代に比べてはるかに生産力が伸び、一定程度の自由も手にしたはずの改革開放後の中国において、医療サービスの利用という点ではむしろ「権原の失敗」が新たに生じたのはなぜか
  • 経済学的思考のすすめ - 梶ピエールのブログ

    一連の北朝鮮関連の報道については個人的に違和感を感じることばかりだが、中でもおかしいと思うのが、北朝鮮政権の一連の行動に関する「意図」については盛んに分析・憶測がなされる一方で、それに反応する日政府の「意図」についてはほとんど問題にされない、という点である。 ゲーム理論やその応用分野である制度分析をもちだすまでもなく、多くの人は「政府」が常に国民全体の利益を最大化するために公平な意思決定を行う、という前提がいかに怪しいものか、感覚として理解しているはずだ。政府は常にそれ自体の利害を追求して行動するし、そういった政府の私的利益の追求を防ぐための制度的な枠組みが不十分なもとでは、往々にして選択される政策のゆがみ、すなわち「政府の失敗」が生じる。これは北朝鮮の政府であろうがアメリカ政府であろうが変わらない。 現に、日においてもこと景気対策に関しては、麻生政権の「隠された意図」「私的利益」を指

    経済学的思考のすすめ - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/04/14
    「北朝鮮のとった行動はいささかも支持されるものではないが、だからといってそれに対する日本政府の反応が検証なしで正しいということもありえない」
  • 人民元の変動をめぐって―データを見ろ― - 梶ピエールのブログ

    あけましておめでとうございます。新春早々無粋な話で失礼します。 前のエントリに対する批判的なコメントがあったため、それに応えるついでに、昨年5月以降におけるドル−元レートの日々の変動をあらわすグラフを作ってみた。 こうすると確かに、2005年7月にドルペッグ制が停止されて以来続いてきた緩やかな元の対ドル増価トレンドが、7月中旬に大きな転換点を迎えていることがわかる。そしてそれ以降は短期間の間には何度も元安局面が生じている。「政府の元安介入があるのではないか」とささやかれたのは12月の初頭であったが(赤い矢印の部分)、こうして中期的なトレンドを見てみると、実際のところ大騒ぎするような動きは何もなかったことがわかる。たまたま時期がポールソンの訪中に重なっていたところからいろいろな憶測を呼んだだけだったのだろう。日経済新聞をはじめ、世論をミスリードするようなニュースを流した新聞各紙には、飯田泰

    人民元の変動をめぐって―データを見ろ― - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2009/01/04
    2008年5月以降のドル・元レートの推移。7月頃から緩やかな元の対ドル増価から安定に変わっている
  • 上海的「買弁資本主義」が中国(経済)をダメにする? - 梶ピエールのブログ

    先日、ある学会主催のシンポジウムで、著名な中国経済学者の公演を聞く機会があった。 中国の改革開放30年間の経験を評価する、というお題だったが、その論者は1980年代の改革を制度が整っておらず、レントシーキング(「官倒」)が横行する不十分なものであったと総括した一方で、1990年代における分税制導入などの一連の財政・金融改革を、それによって初めて市場経済が中国に定着し、高成長が可能になった、と高く評価していた。 この主張を聞きながら、僕は「あれ??」と思った。最近読んだばかりの、Huang Yashengの著作とは間逆の評価がそこでは展開されていたからだ。 Capitalism with Chinese Characteristics: Entrepreneurship and the State 作者: Yasheng Huang出版社/メーカー: Cambridge Universit

    上海的「買弁資本主義」が中国(経済)をダメにする? - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2008/12/02
    中国の80年代の経済と90年代の経済。どちらがよりレントシーキングの多いものであるかは最終的には時間が証明するだろうが、明らかに違う性質を持つものであることは間違いない
  • 10年前とは何が違うのか - 梶ピエールのブログ

    ご存知のように、中国の預金・貸出金利および預金準備率の引き下げが発表された。今回の一連の金融緩和および財政出動のポリシーミックスは、1998年のアジア金融危機後の対応にそっくりだという声もあるが、じっくり比較してみるとむしろ差異のほうが大きいように思える。危機の深刻さは今回のほうがはるかに上かもしれないが、その反面、政府の対応のほうもはるかに適切になっているという印象を受ける。 まず、政策レジーム転換までの素早さが、かつてとは比べ物にならないほど改善している。アジア危機の打撃が明らかになった1998年当時には、ザ・清算主義とも言うべき政策スタンスの朱鎔基が3月に首相に就任したことなどもあって、年初には明らかに景気後退に陥っていることが顕著であったのに、実際は1998年の8月になるまで拡張的な財政政策への転換は見送られた。 預金・貸出金利のほうはかなり引き下げられたが、不況への懸念から貨幣需

    10年前とは何が違うのか - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2008/11/28
    中国経済をアジア通貨危機と比較すると、政策当局の対応の早さ、政策手段の豊富さ(公開市場操作や為替の変動幅の広さ)を考えると、中国経済が再びデフレに陥るリスクは低いのではないかという考察
  • 広東省のシバキあげ主義 - 梶ピエールのブログ

    先日のエントリで 最後に、これはあまり指摘されていないことだが、10項目の経済対策をみていて気がついたのは、アメリカの景気落ち込みによって最も深刻な打撃を受けているはずの広東省を中心とした外資系の輸出企業に対する特別の配慮が、まったくといっていいほど盛り込まれていない点だ。これは、深センや東莞で今苦しんでいる、委託加工貿易かそれに近い形でのビジネスを行ってきた低付加価値の輸出企業に、苦しけりゃさっさと出て行ってくれ、と言っているに等しいように思える。 と書いたのだけれど、話はそう単純でもないようだ。以下、『聨合早報』の報道より。 即使饱受金融海啸袭击,广东省委省政府的立场一直相当坚定,继续执行产业提升政策,中小企业存亡、大批农民工失业等考量屈居其次。广东省委书记汪洋上周更高调批评倒闭的中小企业是“落后的生产力,被市场所淘汰”,他认为面对经济困难关键要有信心,政府不能挽救落后生产力。 可是,

    広東省のシバキあげ主義 - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2008/11/21
    日本の90年代の精算主義のような話は今の広東省にもある
  • 積極果敢な中国の政府と中央銀行 - 梶ピエールのブログ

    このたびの中国の4万億元の経済対策については、日のネット界ではなんといっても津上俊哉氏の分析が詳しいが、こちらの方でもいくつか重要だと思える点をメモしておきたい。まず強調しておくべきなのは、中央銀行が眠ったまま機能していないどこかの国とは異なり、今回の決定が大規模な財政出動と金融緩和のポリシー・ミックスである、ということがはっきりしている点だ。このことは温家宝首相が内需拡大策を打ち出してから間髪を入れず、周小川中国人民銀行行長が、年内の利下げも視野に入れた金融緩和によって財政的な刺激策をサポートするという姿勢を明確に打ち出していることからも明らかである。このような金融当局の積極姿勢を裏付けるように、11日には国債レポ市場における公開市場操作を通じて500億元規模という大規模な流動性供給が行われたと伝えられた。同時に、短期金融市場における流動性供給の手段として新たに入札型ターム物貸出(TA

    積極果敢な中国の政府と中央銀行 - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2008/11/13
    先頃発表された中国の経済対策のまとめ、財政と金融のポリシーミックス、楽観論の台頭、内需中心の経済発展の指向など
  • 中国経済の市場経済化と動学的非効率性(下) - 梶ピエールのブログ

    承前。 以下の議論は専門家の間で共有されているものでもなんでもなく、あくまでも私の思いつきの域を出ませんのでその点ご留意ください。また論旨におかしな点があればご指摘をお待ちします。 さて、地域間の資金移動が限定的なものである、すなわち「国内版ホームバイアス」の問題と「動学的非効率性」の問題がどのようにつながってくるのか。 ここで一応おさらいしておくと、動学的非効率性とは、分権的な経済において投資が飽和状態にあるとき、異時点間の資源配分に関して市場取引を通じてはパレート最適な配分が実現されず、計画者などが強制的に主体間の配分を行うことにより厚生を向上させる余地がある状態のことをさす。竹森では、実質成長率が実質投資収益率を上回っていることが動学的非効率性が成立する必要十分条件としてあげられているが、これは不確実性が存在したり、中国のように金利が規制されている場合には必ずしも当てはまらない。エ

    中国経済の市場経済化と動学的非効率性(下) - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2008/10/31
    国内版「ホームバイアス問題」を動学的非効率性で説明する試み、カギは投資額が純資本所得を上回っていること
  • 「東アジアの奇跡」再論 - 梶ピエールのブログ

    先日、スカパーで契約している香港の鳳凰テレビで、改革開放が始まったころの1980年代、深センの委託加工工場で働いていた当時の「打工妹(出稼ぎの女子労働者)」をスタジオに呼んで、人気キャスターの魯豫が当時の苦労話を聞く、という番組をやっていた。 http://wsx5568.blog.enorth.com.cn/article/351489.shtml もちろん、番組に出ていたおばさんたちのように、その後そこそこ成功して当時のことを笑い話として語れるような「余裕」を身に着けられたのは、ほんの一部の「打工妹」に限られるだろう。しかし、一部の中国の中間層にとって、労働集約的な工場でのガムシャラな労働経験を、外資による「搾取」の象徴というよりも、レトロな「懐かしい過去」として消費する感覚が生まれつつことを予感させるものだった。こういう試みがこれからも出てくるのか、注目したい。 さて、委託加工工場と

    「東アジアの奇跡」再論 - 梶ピエールのブログ
    saka-san
    saka-san 2008/07/26
    輸出加工区の役割
  • ベトナムが大変らしい - 梶ピエールのブログ

    http://arfaetha.jp/ycaster/diary/08/06/08.html http://arfaetha.jp/ycaster/diary/08/06/10.html アメリカがインフレ抑制と、それとの関連でドル価値維持政策に舵を切ったことは、アラブ諸国との関係の中では理解できる。しかし今現在アジア、特に経済のある意味での危機が取りざたされているベトナムにいると、このままのドル価値の諸国通貨、特にアジア通貨への上昇は、これら諸国にとって非常に重荷になる、と思う。 そして火曜日のハノイの新聞「THANHNIEN DAILY」の一面左の記事は、「IMF says it isn't in talks with Vietnum on loans」となっている。ベトナムがIMFからの借り入れ、それは起きうる対外収支危機(今年年初から5ヶ月は経常収支は10億ドルの黒。しかし貿易収支

    ベトナムが大変らしい - 梶ピエールのブログ
  • 園田茂人『不平等国家 中国』 - 梶ピエールのブログ

    不平等国家 中国―自己否定した社会主義のゆくえ (中公新書) 作者: 園田茂人出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/05メディア: 新書購入: 1人 クリック: 29回この商品を含むブログ (22件) を見る 政策決定にも影響力を持つ中国の社会学者たちと広い親交を持つ筆者が、豊富な一次データを駆使して現代中国社会の階層分化を分析。とりあえず重要と思われる点をメモ。 ・中国社会の「不平等」の象徴としてとりあげられることが多い都市の出稼ぎ労働者だが、実際はそれまでの農村での生活に比べれば確実に暮らしがよくなっているので、それほど不満は感じていない。したがって彼(女)らの生活への不満から何らかのカタストロフィーが生じる可能性は非常に低い。 ・しかし、出稼ぎ労働者も都市生活が長くなればなるほど、具体的な不満を募らせる傾向にある。 ・都市住民の中では、低所得者層の方が外来人口の流入に対

    園田茂人『不平等国家 中国』 - 梶ピエールのブログ
  • 汚職・成長・法 - 梶ピエールの備忘録。

    先日NHKBSで放送されたソリウス・サムラ氏によるケニア社会のドキュメンタリーは、物の「賄賂社会」というものがどういうものか余すところなく伝えていた。一言でいうと、ケニアではスラムのようなただでさえ貧しい人々が住むような地域であっても(というか、そういう地域だからこそ)、ほとんどの公共サービス(電気・水道・ビジネスの認可、建築の許可・・)が役人への賄賂なしでは受けることができないのだ。その賄賂の負担の重さは、スラムの住人の生活をますます苦しいものにしている。 また、来はそういった貧しい人たちのためのものであるはずの政府補助金の分配も、やはり賄賂によって左右される。活動実態のない「地域住民組織」やNGOが多数作られ、役人を買収することで正式な認可を受け、補助金を受け取ることが横行しているためだ。このことは、海外からの資金援助もこのようにして不正に着服されてしまう可能性が大いにある、という

    汚職・成長・法 - 梶ピエールの備忘録。