今年5月に社会評論社が出版した『完全自殺マニア』の表紙カバーが『完全自殺マニュアル』(太田出版)の著作権を侵害しているとして、太田出版が頒布差し止めの仮処分を申し立てていたが、東京地裁はこのほど申立てを却下する決定を下した。その後、太田出版は書店に『完全自殺マニア』がほとんど置いていないことを理由に抗告せず、事件は一段落した。 訴訟の経緯については日刊サイゾーの記事(『出版社の信用が完全崩壊! 太田出版が『完全自殺マニュアル』スラップ訴訟で返り討ちに』)を参照いただくとして、今回ここでは、本事件の決定の内容からパロディ表現と著作権侵害の線引きについて考えてみたい。 ●東京地裁申し立て却下の内容をおさらい まず、東京地裁が申立て却下の決定を下した理由をみてみよう。 「債務者カバー(『完全自殺マニア』)が債権者カバー(『完全自殺マニュアル』)に依拠したものであることは認められるものの、債務者カ