1 わたしはあずにゃん。わたしはハリウッド・パーク競馬場にいた。開催日だというのに、場内は閑散としていた。青空の向こうに、シエラレオネの山々が見えた。色とりどりの勝負服が陽光にきらめき、ゴール板の前を駆け抜けていった。 運送屋のつなぎ姿の律先輩がいた。「あちゃー、ちょっと穴狙いがすぎたかー」といって、馬券を破りすてた。そのあと、プリティストロングはトコトコと歩きながらゴール板を通り過ぎた。 「だめじゃないですか、お金は大切にしないと」とわたし。 「まあ堅いこと言わないの。それに本番はこれからだから」と律先輩。 先輩は、どこからか100ドル札の束を取り出した。何本のヴィンテージ・ギターを売り払えば、それだけの額になるのか見当もつかなかった。 「10レース、ベターフォーチュンの単勝に全部」 律先輩は穴場に札束を積み上げた。そんな馬鹿なかけ方があるんだろうか? わたしは気が遠くなるような気がした