白い砂浜から水平線にかけて続く、青のグラデーション。なぎさに沿うように建てられた国立ハンセン病療養所「宮古南静園」(沖縄県宮古島)を訪れた女性(59)がつぶやいた。「生まれたことに感謝してる」 かつて「奇跡の子」と言われた。強制的な人工中絶をくぐり抜け、生まれてきたからだった。 旧優生保護法(1948~96年)は、ハンセン病も強制手術の対象にしていた。生まれた当時、沖縄は米軍統治下で同法の適用はなかったが、園では戦時中から「妊娠すれば堕胎」が続いていた。 ハンセン病が子に感染するとの誤解があり、同法と同じように、「不良な子孫」が生まれないようにするためだった。身ごもった母は、堕胎を当然視され、腹部に薬液のようなものを注射された。しかし、「失敗」した。女性は奇跡的に生を受け、感染もなかった。
旧優生保護法(1948~96年)下で知的障害を理由に不妊手術を施された宮城県の60代女性が「重大な人権侵害なのに、立法による救済を怠った」として、国に1100万円の損害賠償を求めた全国で初めての訴訟の第1回口頭弁論が28日、仙台地裁(高取真理子裁判長)で開かれ、国は請求棄却を求めた。女性の弁護団団長は意見陳述で「子供を生み育てるという自己決定権を奪い取る手術で、憲法で保障された基本的人権を踏み
60代女性に開示された手術記録の一部のコピー。手術理由に「遺伝性精薄(精神薄弱)」、手術方法に卵管を縛る「マドレーネル法」とある=宮城県内で2018年3月24日、遠藤大志撮影(画像の一部を加工しています) 宮城県の60代女性が、全国初の国家賠償請求訴訟を仙台地裁に起こすことにつながった同県の「優生手術台帳」は、女性が開示請求する4カ月前の2017年2月下旬、子育て支援課で発見されていた。きっかけは、厚生労働省からの調査要請だった。 発見数日前の同22日、日本弁護士連合会が、旧優生保護法(1948~96年)下で強制不妊手術を受けたという宮城県内の70代女性の人権救済の申し立てを受け、被害者への謝罪や補償を求める意見書を厚労省に提出した。その記録の有無などを確認するため、同省担当者が宮城県に電話をしたのだ。 指示を受けた子育て支援課の相沢明子課長補佐は、文書管理目録にある「優生手術台帳」を捜し
■要旨 状況に応じて障害者を柔軟に支援することで、障害者の権利確保に主眼を置く障害者差別解消法が2016年4月に施行されて2年が終わろうとしている。この法律は障害者の特性や個別事情に応じた「合理的配慮」の提供を行政機関に義務付けており、各行政機関では職員の適切な対応に必要なことを定める「対応要領」の策定などが進んだ。 しかし、障害者差別解消法は「対話→調整→合意のプロセス」を当事者の間で義務付けているだけであり、「合理的配慮として、どういった支援を提供するか」という点については、障害者と行政機関など当事者同士の調整に委ねられている分、分かりにくいのも事実である。実際、障害者差別解消法や合理的配慮の目的や意味が社会に浸透しているとは言えないだろう。 本レポートでは、合理的配慮を中心に障害者差別解消法の内容を詳しく解説するとともに、自治体の動向やメディアの報道ぶりなどを基に、2年間の動きを考察
厚生労働省は、相模原市で2016年7月に起きた障害者施設殺傷事件を受けて再発防止策を盛り込んだ精神保健福祉法改正案について、今国会への提出断念の方針を固めた。障害者団体や野党の批判が根強く、政権が最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案の審議にも影響しかねないと判断した。 同省は今国会以降も同じ内容の法案は提出しない考えだ。 殺人罪で起訴された植松聖被告(28)は、事件前に措置入院していた。退院後に自治体などから十分な支援を受けられなかったとの指摘を踏まえ、厚労省は再発防止策を検討。改正案は、自治体や医療機関、警察などが連携する仕組みを設けることが柱。自治体が医療機関と協力して患者ごとに「退院後支援計画」を作成するように定めている。これに対し、障害者団体や野党は「患者の監視強化につながる」と反発していた。
内閣府は16日、第4次障害者基本計画(2018-22年度)の案を公表した。「保健・医療の推進」の項目では、入院中の精神障害者の早期退院や地域移行を促進し、「社会的入院」を解消する方向性を明記した。3月中の閣議決定を目指す。【新井哉】 「社会的入院」を解消するため、専門診療科とそれ以外の診療科、保健所、健診機関との連携を促進するとした。また、救急ニーズに対応できる精神科救急システムを確立するなど、地域における適切な精神医療提供体制を整える必要性を...
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