銀行員は『人事が全て』と言われることもある。つらく、つまらない仕事が多いが耐え偲べば役職で報われるのだ。そして、偉くならなければ自分の意見は通せない。突然の転居を伴う異動を命ぜられることもしばしばだ。転勤一つでも家族には大きな影響かあるのだ。 そんな銀行員の悲喜こもごもを左右するのが人事部だった。 「それで、お呼びした用件なんですが」伊東が話し始めた。田嶋はあわてて伊東の言葉に意識を集中した。伊東がいつもの敬語に戻っている。仕事モードだ。 「田嶋さんが担当する店舗を変更しようと考えています。これからは、神奈川県内の店舗を担当してもらうことになると思います。旧Yの店が多い大事な地域です。現在担当している宮崎さんは、恐らく異動になる予定です。その後任として、重責を担って下さい」伊東はさらっと伝達してきた。 「ご期待ありがとうございます。しっかり役目を果たします」田嶋は深々と頭を下げた。 旧Y出
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