江戸情緒を愛し、反時代的な生き方を貫いた作家、永井荷風の晩年の創作ノート2冊が見つかった。 短編「吾妻(あづま)橋」や戯曲「渡鳥(わたりどり)いつかへる」をはじめ、1950~59年に発表した小説・戯曲13作や随筆などが下書きされている。膨大な推敲(すいこう)の跡のほか、題名や構成を大きく変えた作品もみられ、孤高の文学者の創作過程を伝える貴重な資料だ。 川島幸希(こうき)・秀明大学長が昨春、東京都内の古書店で購入し、詳細が確認された。大学ノートで2冊あり、約140ページと約60ページに鉛筆書きされている。 1冊目のノートの冒頭には、1950年発表の戯曲「渡鳥いつかへる」のもとになる下書きが、「二人艶歌師(えんかし)」の題名で小説形式で記されていた。