李 啓充 医師/作家(在ボストン) (3027号よりつづく) 前回のあらすじ:2013年4月15日,米最高裁で,乳癌・卵巣癌関連遺伝子BRCA1/2の特許をめぐって「ヒト遺伝子を特許の対象とすべきかどうか」についての審理が行われた。 前回も述べたように,短いDNA塩基配列に対する特許も含めると,米国では,ほとんどすべてのヒト遺伝子が特許の対象となっている。遺伝子に対する特許はあまた認められているというのに,なぜ,よりによってBRCA1/2の特許をめぐって訴訟が争われることになったのだろうか? その理由を理解するためには,原告団の顔触れを見ることが手っ取り早いので,以下に,2009年にニューヨーク南地区連邦地裁で争われた第一審時の訴状から各原告が訴えるに至った背景を紹介する(なお,各原告の年齢は第一審当時)。 独占特許を利用した「商売」に対して立ち上がった原告ら *リスベス・セリアニ(43歳