岸政彦さんへの『図書室』刊行記念インタビュー(前編はこちら)。後編では、大阪や沖縄が好きな理由、「体張って生きてる人が偉い」という信仰、他者理解をめぐる困難について──。 ──岸先生のエッセイにも、小説にも、社会学者として収集しておられる「匿名の個人の生活史」への眼差しが多く反映されているように感じます。個人の生活史にご興味を持ち始めたのはいつからですか? 岸:もともと『ROCKIN'ON JAPAN』って雑誌、あるじゃないですか、あの副編集長が昔出してた『ポンプ』っていう、薄い、最初から最後まで読者投稿欄だけの雑誌があったんですよ。そこに長文からハガキの小ネタまで、なんでも載ってたんですよね。写真やイラストとかも。匿名の人たちの、なんでもない文章やメッセージがたくさん載ってて、それを読むのが好きだったんだよね。他にもスタッズ・ターケルっていう、オーラルヒストリーだけを並べて分厚い本を書く