安倍晋三前政権が掲げ、菅義偉政権にも引き継がれた「アベノミクス」。機動的な財政出動、大規模な金融緩和を旗印に9年近く続いた経済政策は、菅首相の退任でいったん区切りを迎える。アベノミクスは日本経済に何を残したのか。次期政権が取り組むべき課題は何か。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストに聞いた。【聞き手・松岡大地/経済部】 過度な景気刺激策の弊害 ――菅政権も引き継いだアベノミクスを、どう評価しますか。 ◆功罪あると思います。戦後最長の「いざなみ景気」(2002~08年)には及びませんでしたが、景気回復を続けるという目的は達しました。一番の成果は、完全失業率が3%を大きく下回り、働く意思と能力のある人がほぼ働いている「完全雇用」の状態を達成したことです。 菅政権は独自の政策も掲げました。50年の温室効果ガス排出実質ゼロ、デジタル庁創設、携帯電話料金の引き下げなど、1年で重量級の政策を