今年のノーベル文学賞に米の女性詩人、ルイーズ・グリュックさん(77)が選ばれたことが、日本の文芸書出版の盲点を改めて浮き彫りにしている。グリュックさんは米国内で権威ある文学賞を受けてきたベテラン詩人だが、単著の邦訳はなく日本ではほぼ無名の存在だったからだ。古代ギリシャ以来の長い伝統を誇る詩は西洋諸国では今でも文学の王道だが、翻訳出版には厚くて高い壁が立ちはだかる。 (文化部 海老沢類) 書店には“有力候補”がずらり 「集められるものを集めて売り場を作りました。受賞者の作品を並べるのが理想だったのですが…」 そう漏らすのは六本木蔦屋書店(東京都港区)の文芸書担当書だ。同店は今月2日から20日まで「ノーベル文学賞のゆくえ」と題したフェアを企画。8日の文学賞発表後は受賞作家の邦訳書を中心にした売り場づくりを想定していた。ところが受賞者のグリュックさんの作品は、アメリカ現代詩の選集や雑誌にごく一部