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ブックマーク / natgeo.nikkeibp.co.jp (66)

  • 土星探査機カッシーニ、エンケラドスの間欠泉に突入

    10月28日、探査機カッシーニは土星の衛星エンケラドスのプルームへ最接近通過を果たした。(Image by NASA/JPL-Caltech) NASAは10月28日、土星探査機カッシーニが土星の衛星エンケラドスの南極上空およそ49キロの接近通過(フライバイ)に成功したと発表した。数日中にデータを地球に送る予定。 今回のミッションは、エンケラドスの南極付近から噴出する「プルーム」と呼ばれる巨大な間欠泉の中を探査機が通過し、そのサンプルを採取すること。プルームが高さ数千キロにも達するのは、この衛星表面の裂け目から少なくとも101個の間欠泉が水蒸気と氷を噴き上げているためだ。 26日に開かれたNASAの記者会見で、カッシーニ計画の科学者カート・ニーバー氏は、「エンケラドスは海があるというだけではなく、これまで観測してきたように、生命が生きられる環境が整っている可能性があります。我々は地球以外の

    土星探査機カッシーニ、エンケラドスの間欠泉に突入
  • 日本の切り紙「網」の技術で太陽電池の集光3割増

    平らな薄膜太陽電池に切り込みを入れ、太陽の動きに合わせて引っ張ると、表面に太陽光を受けやすい傾きがついて、集光効率を最大化することができる。(PHOTOGRAPH BY AARON LAMOUREUX, UNIVERSITY OF MICHIGAN ) 最先端の太陽電池パネルのコンセプトは、2つの道具によってもたらされた。紙とハサミだ。 日の切り紙細工からヒントを得た米ミシガン大学の研究者が、七夕飾りの「網」のように広がる太陽電池を開発した。太陽の動きに合わせてこの太陽電池を引っ張ることで、表面に太陽光を受けやすい傾きが生じるおかげで、効率よく集光できる。このアイデアに関する詳細な論文は、9月8日に「Nature Communications」誌に掲載された。 太陽の位置は刻々と変わっていくのに、太陽電池パネル自体は基的に動かないため、自動的に太陽を追尾する架台の上に載せないかぎり、常

    日本の切り紙「網」の技術で太陽電池の集光3割増
  • イルカ・クジラの「潜水病」、集団座礁の一因か

    米国ハワイ島コナ地区沖のコブハクジラ(Mesoplodon densirostris)。コブハクジラをはじめとするアカボウクジラ科のクジラの顎の脂肪は、窒素ガスを溶かし込む能力が高いことが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY CHRIS NEWBERT, MINDEN PICTURES/NATIONAL GEOGRAPHIC) 海中での生活に適応しているにもかかわらず、スキューバダイビングをしている人間と同じように、イルカやクジラも潜水病(減圧症)になる可能性が最新の研究で明らかにされた。 減圧症とは、水中を急浮上して水圧が急に下がると、血液や体液に溶け込んでいた気体が気泡となって、血液や臓器の中にエアポケットを形成する現象だ。発症すると筋肉や関節の痛みを生じるだけでなく、死に至ることもある。ヒト以外の潜水する動物については、減圧症の研究は進んでいない。動物の組織中で、これらの気体

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  • アレクサンドロス大王の父の墳墓を特定か

    1970年代の終わりにギリシャのヴェルギナでこの墳墓を発掘した考古学者らは、被葬者は古代マケドニア王フィリッポス2世だと結論付けた。しかし、フィリッポス2世は近くにある別の墳墓に埋葬されていることを示唆する新しい証拠が見つかった。(Photograph by Petros Giannakouris, AP ) 新たな法医学的研究により、アレクサンドロス大王の父、古代マケドニア王フィリッポス2世の埋葬地を巡る長年の論争に終止符が打たれるかもしれない。 1977年および1978年にギリシャのヴェルギナで王家の墳墓3基が発掘されて以来、フィリッポス2世はこのうち第2墳墓(「フィリッポスの墓」と呼ばれる)に埋葬されたものと多くの考古学者が考えていた。ところが、このほど第1墳墓から発掘された成人男性の脚の骨を分析した結果、大きな槍傷の跡が見つかり、古代の文献にフィリッポス2世が339年の戦いで負った

    アレクサンドロス大王の父の墳墓を特定か
  • 冥王星の衛星カロンに謎の黒い領域

    冥王星の最大の衛星カロンの極地方の暗さとひび割れた表面は、ニューホライズンズの研究チームを驚かせた。(PHOTOGRAPH BY NASA-JHUAPL-SWRI) NASAの探査機「ニューホライズンズ」が冥王星に最接近した際に撮影した画像の一部が公開された。 冥王星の赤道付近を撮影した画像からは、まだ地質活動があるように見える地表と、高さ3500mほどの氷の山々が見てとれる。この氷は、メタンや窒素ではなく水が凍ったものだ。冥王星の5つの衛星についても、ひときわ大きい衛星カロンの詳細な画像と、小さな衛星ヒドラの最初の画像が公開された。一連の写真は、氷の天体に関するこれまでの理解に早くも疑問を投げかけている。「冥王星系のすばらしさに驚嘆しました」と、ニューホライズンズの主任研究者アラン・スターン氏は語る。 7月14日、ニューホライズンズは冥王星系を猛スピードでフライバイ(接近通過)し、最接近

    冥王星の衛星カロンに謎の黒い領域
  • 月はいびつな雲に包まれていた

    アポロ計画の宇宙飛行士たちは、月の地平線上に謎の光を目撃した。写真は米国の月探査機クレメンタインが撮影。(PHOTOGRAPH BY NASA) 月は常にいびつな形の塵の雲に包まれていることが、米コロラド大学などの調査で明らかになった。大気のない天体のまわりに雲があるだけでも奇妙だが、この塵の雲を作り出した犯人はもっと変わっている。彗星だ。 彗星は小さな塵粒子をまき散らしながら太陽の周りを軌道運動しているが、6月18日付『ネイチャー』誌に発表された論文によると、軌道に残った塵粒子が月に衝突すると、月の塵が一時的に宇宙空間に舞い上がるという。「月は私たちに最も近い天体ですが、いまだに驚かされることばかりです」と、米NASAのゴダード宇宙飛行センターのリチャード・ヴォンドラク氏は語る。 流星群の時期に増える塵 観測によると、月の上空には常に平均120kgの塵が漂っているという。この塵は月面から

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  • スキタイの黄金の埋葬品を発掘、「世紀の大発見」

    バケツ型の器が2つ、杯3つ、指輪1つ、首輪2つ、腕輪1つ。ロシア南部にあるスキタイ人の墳丘墓から発見された純金の埋蔵品の数々だ。(Photograph by Andrei Belinsky) ユーラシア大陸の広大な草原をおよそ千年間にわたって支配した騎馬民族。彼らは古代ギリシャ人やペルシャ人を恐怖で震え上がらせたが、都市や住居の痕跡は一切存在せず、今はただモンゴルから黒海にかけて広がる草原にクルガンと呼ばれる墳丘墓が点々と残るのみ――。 ロシア南部のカフカス山脈にあるそのクルガンから、このほど興味深い発見が報告された。見つかったのは、騎馬民族のなかでもギリシャの歴史家ヘロドトスがさまざまな偉業と麻薬の儀式について書き残した勇猛にして謎の人々、スキタイの黄金の埋葬品だ。 「これは世紀の大発見です。これまでに一帯で発見された中でも、とりわけすばらしい逸品です」。ドイツ、ベルリンにあるプロイセン

    スキタイの黄金の埋葬品を発掘、「世紀の大発見」
  • 太陽の300兆倍、宇宙一明るい銀河を発見

    新たに発見された銀河WISE J224607.57-052635.0のイラスト。太陽の300兆倍以上という、宇宙一の明るさを誇る。(Illustration by NASA) 1000億個、あるいはそれ以上の銀河がひしめく宇宙で、最大の輝きを放つ銀河が見つかった。 新たに発見された銀河WISE J224607.57-052635.0の明るさは、太陽の300兆倍を超える。米NASAジェット推進研究所(JPL)の天文学者ピーター・アイゼンハルト氏らの研究チームが、専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」6月号に発表した。 地球からはるか遠く離れたこの銀河の輝きは、恒星によるものというよりも、むしろ「怪物級のクエーサー」から出ているとアイゼンハルト氏は話す。 クエーサーは、銀河の中心にある巨大なブラックホール。ガスを大量に吸収し続けているため、周囲のちりが加熱されて数百万度もの高温になる。そうし

    太陽の300兆倍、宇宙一明るい銀河を発見
  • 絶滅危惧ノコギリエイの単為生殖を初確認

    米フロリダ州エバーグレーズ国立公園の沖あいに生息するスモールトゥース・ソーフィッシュ。(Photograph by Doug Perrine, Nature Picture Library/Alamy) ノコギリエイの1種で、絶滅が危惧されているスモールトゥース・ソーフィッシュには、雌が雄と交わることなく子どもを産む「処女懐胎」のような能力があることがわかった。学術誌『Current Biology』に発表された研究によると、処女懐胎、つまり単為生殖によって、これまでに7匹の子供が生まれているという。(参考記事:「アミメニシキヘビの単為生殖を初確認」) 単為生殖は、サメやヘビ、鳥などにも見られるが、野生のエイの仲間で確認されたのは今回が初めて。米ストーニーブルック大学の遺伝学者で、今回の論文の筆頭著者であるアンドリュー・フィールズ氏は、交尾相手が見つからない環境で子どもを作らなければならな

    絶滅危惧ノコギリエイの単為生殖を初確認
  • 冥王星の「踊る」衛星を発見、ハッブル望遠鏡

    冥王星の衛星ニクスの4年間の運動を2分のアニメーションにしたもの。自転が予測不可能な変化をしていることがわかる。(Video: NASA; ESA; M. Showalter, SETI Institute; G. Bacon, STScI) NASAのニューホライズンズ探査機が冥王星に最接近する7月14日まであと数週間。ハッブル宇宙望遠鏡による冥王星の観測データから、冥王星の衛星のうちニクス、ヒドラ、ケルベロス、ステュクスの4つが予測不能な奇妙な動きをしていることが明らかになり、6月4日付け『ネイチャー』誌に発表された。 「ニューホライズンズはすばらしく魅力的な系に入ろうとしているのです」と、論文を執筆した米SETI研究所のマーク・ショーウォルター氏は言う。 不規則にごろごろ転がっていた ショーウォルター氏はハッブル宇宙望遠鏡の膨大な量の画像を調べ、冥王星の小さな衛星の中では比較的大きい

    冥王星の「踊る」衛星を発見、ハッブル望遠鏡
  • 第24回 朝型勤務がダメな理由

    最近、「朝型勤務」が話題だ。言い出しっぺの政府から範を垂れるということか、まずは今夏7〜8月に国家公務員の始業時間を原則1~2時間前倒しすることを決めたらしい。この種の話は時々登場しては自然消滅するが、今回は安倍首相が閣僚懇談会で朝型勤務の推進を直接指示したそうだから、これは重い。実際、厚生労働大臣名で経団連、日商工会議所、全国中小企業団体中央会に朝型勤務推進の協力を要請したとのことで、その気度が伺い知れる。 私の勤務先は行政府とのつながりが深く、現在でも厚労省関係の研究事業を数多く請け負っているし、医療政策上の提言などもする。国が決めた施策に真っ向から異論を唱えるのはいささか具合が悪い面もあるのだが、率直に言ってこの朝型勤務は「いただけない」。多数の労働者とその家族に心身両面の負担をかけることになるため、実行するのであれば少なくともセーフティネットを張る必要がある。

    第24回 朝型勤務がダメな理由
  • はぐれ銀河を11個発見、故郷を追われた原理解明

    アンドロメダ銀河(M31)の中心部の右下に写っている輪郭のぼやけた丸い天体は、コンパクト楕円銀河M32だ。M32はM31の伴銀河だが、ほかの放浪するコンパクト楕円銀河と同様、激動の過去を持つのかもしれない。(PHOTOGRAPH BY R. GENDLER) 宇宙は放浪者でいっぱいだ。何十億という惑星や恒星が生まれ故郷を離れてさすらっているが、このほど、銀河がまるごと放浪者の仲間入りをした。 4月24日付け『Science』誌に掲載された論文によると、コンパクトな銀河は、重力の作用によって故郷の銀河団からはじき出される場合があることが明らかになったという。 コンパクト楕円銀河と呼ばれる銀河は、星の密度が高く、ボールのような形をしていることが多い。また、ほかの銀河に比べてかなり小さく、星の数はせいぜい数十億個である。私たちの銀河系は平均的な銀河だが、約1000億個の星からなる。 コンパクト楕

    はぐれ銀河を11個発見、故郷を追われた原理解明
  • 専門家に聞く、「イスラム国」遺跡破壊のねらいは?

    ISはイラクの文化遺産の一つ、古代ニムルドの遺跡を爆破する動画をインターネット上に公開した。(Photograph by AFP/Getty) 4月11日、ある動画がソーシャルメディアに投稿されると、ニュースは瞬く間に世界中へ配信され、国際社会から非難が集まった。だがこれは、過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)がねらった通りの展開と言っていい。 約7分間の動画には、ISの戦闘員がハンマーやブルドーザー、爆発物で古代遺跡を破壊する様子が映っている。専門家らはこの遺跡を、アッシリア王が紀元前9世紀に古代都市ニムルドに建てた北西宮殿と特定した。 ISがハンマーやブルドーザー、爆薬を使ってイラクの古代都市、ニムルド遺跡を破壊する様子を映した動画。インターネット上で公開された。 今回の動画に映っている破壊行為があったのは、おそらく3月中旬から4月初旬の間と考えられる。動画では

    専門家に聞く、「イスラム国」遺跡破壊のねらいは?
  • 米国の小魚、息を5時間止められる

    パプフィッシュは高温の環境で身を守る方法を発達させてきた。無酸素で活動する能力は並外れているが、代償も伴う。(Photograph by Joel Sartore, National Geographic Creative) 息を止めることにかけて、この魚に勝てる生き物はいない。米国カリフォルニア州、デスバレー近郊の温水にすむ小さな魚、デザート・パプフィッシュ(学名:Cyprinodon macularius)は、最長で連続5時間も酸素をほとんど取り込まずに生きていられることが、新たな研究で明らかになった。 砂漠にすむパプフィッシュがこの驚異的な能力を発達させたのは、激変する環境で生き抜くためという。ネバダ大学のフランク・ファン・ブリューケレン氏とスタンリー・ヒルヤード氏が、米国生理学会の実験生物学大会(Experimental Biology Meeting)で発表した。 繁殖の時間を減

    米国の小魚、息を5時間止められる
  • カッパドキアに新たな地下都市、過去最大と推定

    発見のきっかけは、市の住宅建設プロジェクトだった。2013年、ネブシェヒルの城を取り囲むように建っていた低所得者向け住宅を解体していた作業員たちが、地下への入り口を発見。その先にはトンネルと部屋が網の目のようにつながっていた。 市は建設プロジェクトを中止すると、考古学者や地球物理学者による調査を開始。2014年に居住空間や調理場、ワイン醸造所、礼拝堂、階段などから成る多層構造の地下都市を発見した。石臼や石の十字架、陶磁器といった遺物からは、ビザンチン期からオスマン帝国の支配下に置かれるまで、ここが実際に使用されていたことがうかがえる。 この地下都市は、デリンクユと同様に通気口や水路といったインフラを備えた巨大居住空間だった。カッパドキアの人々は危険が迫ると家畜を連れ、生活必需品を持ってこの地下都市に逃げ込み、丸い石の扉で入り口をふさぐと、脅威が去るまで籠城したようだ。 ネブシェヒル大学の地

    カッパドキアに新たな地下都市、過去最大と推定
  • イルカ襲う、つぶらな瞳の無慈悲なアザラシ

    愛らしい表情を見せるハイイロアザラシ。海の人気者が、実際は「情け容赦のない捕者」という証拠が相次いでいる。(Photograph by Brian J. Skerry, National Geographic) 一見、ほのぼのした光景だった。2013年、北海に浮かぶドイツ領ヘルゴラント島。沖で2頭のアザラシがふざけ合っているらしく、そのうち波の下へ潜っていった。間もなく、不気味な赤い色が波間に広がった。2頭が再び水面に現れたとき、大きい方のアザラシがもう一方のアザラシの皮をはぎ、べていたのだ。 「2頭は遊んでいるとばかり思いました」。環境コンサルティング会社「IBLウンヴェルトプランノン」の海洋生物学者セバスチャン・フアマンは振り返る。同氏が撮影した、襲われる若いゼニガタアザラシの写真は、『Journal of Sea Research』誌の2015年3月号に掲載される予定だ。「最初見

    イルカ襲う、つぶらな瞳の無慈悲なアザラシ
    shadow-toon
    shadow-toon 2015/02/09
    意外とでかいからね
  • 【連載】睡眠の都市伝説を斬る

    このところ急速な進歩を遂げた睡眠の科学だが、それだけに誤解も流布している。そこでNHK​「​きょうの健康」や「チョイス@病気になったとき」などでもおなじみの第一人者が都市伝説を一刀両断!睡眠の常識と非常識を科学の視点から紐解き、日々の快眠に役立つ確かな情報をお届けします。

    【連載】睡眠の都市伝説を斬る
  • 特別編 渡辺佑基「マグロは時速100キロで泳がない」

    世界最速のスイマーであるバショウカジキは時速100キロ以上で弾丸のように海を飛ばす。マグロも負けず劣らず、時速80キロでびゅんびゅん泳ぐ。シャチは時速70キロで前進するし、ペンギンは時速60キロですいすいと海を渡る――。 以上の話は子ども向けの図鑑などでしばしば見られる、海の動物たちの「真実」である。流線形の体とアスリートのような筋肉をしたカジキやマグロやシャチは、驚くほどうまく水中生活に適応しており、まるで高速道路をはしる車のようなスピードで大海原をびゅんびゅん泳ぐとされる。 ところがどっこい、である。海洋生物学者である私は、実際にバショウカジキの遊泳スピードを海で計測した科学論文を調べてみたところ、平均スピードは時速2キロと知った。いや書き間違えではない。20キロでも200キロでもなく、2キロ。ちょうどお年寄りの散歩くらいのスピードで「世界最速」のバショウカジキは泳ぐ。 ちなみにマグロ

    特別編 渡辺佑基「マグロは時速100キロで泳がない」
  • 第73回 頭をいくつもくっつけた奇妙な虫を発見

    モンテベルデの森へ引っ越してから1年が過ぎた。研究対象にできる森は広く深く続いているが、今のところ、ぼくの主な調査場所は家のドアから半径50メートル圏内。森の奥へ調査に行くことはほとんどない。ピソちゃん(ハナジロハナグマ)がうろうろするように、ぼくもラボの周りをうろうろしている。 身近でも研究対象に事欠かないというのが一番大きな理由だが、同時にぼくは、身近なところからコツコツと調査することを心がけてもいる。 近いから研究がしやすいし、日々の変化もわかりやすい。それにぼくが住んでいるバイオロジカルステーションは、ちょうど人工的なものと自然との境界なので、人々の活動が自然に及ぼす影響も見やすい。そこで得られる情報は、やがて国立公園や自然保護区など原生の自然の保全保護につながるだろう。 そんなこんなで今回紹介するのは、ぼくの身近な自然のなかでもさらに身近な、家のドアから5メートル圏内で出会った虫

    第73回 頭をいくつもくっつけた奇妙な虫を発見
  • キルギス 誘拐婚の現実

    女性を連れ去り、強引に結婚させる「誘拐婚」。中央アジアの国、キルギスで続く驚きの慣習を、4カ月かけて取材した。 文・写真=林 典子 「お願いだから車を止めて! ドライブに誘い出しておいて、私を誘拐するなんて。嘘をついたのね、最低な男!」 女性が誘拐されたことに気づいたのは、キルギス中部の都市ナルインの外れにある大峡谷に差しかかったときだった。迎えに来た男の車に乗り込んでから、20分が経過していた。 車の速度がどんどん上がる。日はすでに沈んでいた。北西へしばらく走り、見えてきたのは、標高2000メートルの果てしない放牧地。ときどきすれ違う羊飼いは、こちらの状況など知る由もないだろう。「元いたところに帰して!」と彼女が叫んだ。 警察も裁判官も助けてくれない 約540万人が暮らすキルギスで、人口の7割を占めるクルグズ人。その村社会では、誘拐婚が「アラ・カチュー」と呼ばれ、慣習として受け入れられて

    キルギス 誘拐婚の現実