小野善康・大阪大特任教授 経済成長もインフレも起こらない中で、政府が強調するアベノミクスの成果とは、株価の上昇と雇用の拡大、特に女性の就業者数の拡大である。 このうち、株価はバブル特有の乱高下を繰り返すだけだが、就業数の拡大や失業率の低下は実体経済の指標であり、本当であれば非常に望ましい。 しかし、中身を吟味すると、とても成果とは言えない厳しい現実が見えてくる。グラフは、男女合計および男女別の就業者数の動きを、実質国内総生産(GDP)の推移とともに示している。グラフの各就業者数は2006年第1四半期の値との差で表している。 このグラフから、アベノミクス以前の就業者数の変化は、リーマン・ショックによる男性就業者の大幅減少によるものであり、13年のそれ以降は男性の就業者は伸びず、もっぱら女性の就業者増が総就業者数の増加を支えていることがわかる。同時に注目すべきは、この間、実質GDPが横ばいとい