「死ぬまでに読みたい」シリーズ。人生は有限だが、この事実を忘れることが多い。 古典として名高い分、敬遠してきた。もちろん新潮・岩波に手を出してヤケドしたこと幾度か。けれどもなぜか、あらすじとあの文句は知っている→「時よ、とどまれ、おまえは美しい」。ためしにGoogleってみるといい。いつもならAmazonが鎮座ましまする最上位にWikipedia「ファウスト」が居るのは、それだけ皆が本を回避してきた証拠のようにみえてくる。 それが、さっくり・すんなり読めてしまった。これには、ワケがある。 実は、今回手にしたのは、歌劇であり詩劇ではなく、散文「ファウスト」なのだ。これは訳者・池内紀氏のおかげ。氏曰く、「ファウスト」には場面に応じたさまざまな詩形が使われており、それだけでもゲーテは天才だといえる。しかし、そいつを日本語にした瞬間、彼が苦心した一切が消えてしまう。韻律が極端に乏しくなり、まるで別