1.「男性問題」とは何か 2.「男性問題」の登場 3.「男性問題」の時代としての90年代 4.男性と〈男らしさ〉の関係を問う 5.〈男らしさ〉の社会学に向けて 1.「男性問題」とは何か 日本において男性学が登場したのは1980年代後半のことである。「人間イコール男という暗黙の図式が、ほとんど無自覚にアカデミアを含む社会の諸領域に組みこまれていた時代には、ことさら男性性(男らしさ)が『問題』として取りあげられる理由はなかった」[中河,1989: 4]。換言すれば、フェミニズムによってジェンダーという分析概念がもたらされたことによって、はじめて「男であること」が問題含みであるという視点が成立したことになる。したがって、男性学は「フェミニズム以降の男性の自己省察」であり、「フェミニズムの当の産物」[上野,1995: 2]であるといえるだろう。 しかし、さまざまな立場の違いがあるにせよ、フェミニズ