この渋い映画はまぎれもない傑作である。トーマス・マッカーシー監督、リチャード・ジェンキンス主演の「扉をたたく人」は、味わい深い余韻をぼくの心に残してくれた。 最初は注目されたわけではなかったが、徐々に口コミで広がって、主演のリチャード・ジェンキンスが、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされるまでになった。確かに、リチャード・ジェンキンスは素晴らしい演技で、孤独でさびしい大学教授役を見事に演じきった。 その大学教授は、妻に先立たれ、やる気もなく学校でもずっと同じ講義録で教壇にたっている。そんな彼が、行きたくもなかった学会出席のためにニューヨークの別宅のアパートに入ったら、そこにアラブ人の男とアフリカ娘のカップルが暮らしていたというハプニングが起こる。 そこで一旦は追い出すのだが、何かあったのか行くあてもない二人を呼び戻して、同居することになる。そして、そのアラブの若い男はジャンベという打楽器