以前、ちょっとした理由で関東近県の貯水ダムを見学してまわったことがある。ダムに行くと、たいていどこでも見学者向けの資料館が併設されており、ダムの仕組みや、ダムがいかに人々の暮らしに役立っているかを解説した展示が、これ見よがしにかかげられていた。 巨大土木としてのダムには心をときめかせつつ、どことなく違和感もぬぐえなかった。なぜなら、どの説明展示にも奇麗事しか書かれていないからだ。 それでも、ダムはまだマシな方だ。同じような展示スタイルは原子力発電所でも見られるが、こちらは問題がもっと深刻だ。原発を運営する側──電力会社は、口を揃えて「原発は安全で、コストが安く、クリーンなエネルギーです」とアピールしてきた。でも、ひとつも根拠のないお題目だったことを、福島第一原発が証明してしまった。 なんでこんなことになってしまったんだろう。 いまからおよそ30年前に、みずから原発労働者の中に身を投じた人物
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